鳥谷: 製作するにあたり、卓球がどれほど激しいスポーツなのか、会場がどのような明るさなのか試合を何度も見に行きました。
試合を見に行って初めて気が付きましたが、最近の試合会場は、演出としてライトアップされているのです。周りは暗いのに卓球台にライトが集中していて、光の加減が取りにくいなという印象でした。
しかし、「見えにくい」という目の状態は、水谷さん本人でないと分かりません。「卓球台の照り返しを抑えたい」とか「もうちょっと明るく見えた方がいい」といった要望をもらいながら何度もレンズを調整し、19年の年末ごろに最終的なレンズに行きつきました。
屋外の場合は、紫外線や日差しの対策になっていれば、ある程度納得のいく製品になります。しかし今回は屋内での使用なので、最低限の光を抑えながらも、ボールはしっかり見えることが大事になります。今回のレンズは、LEDライトや光のまぶしさを適度に抑えつつコントラストを高めることで、物体を認識しやすくすることが特徴です。
――叫んでもズレないと話題になりました。ズレない理由は何ですか?
鳥谷: そもそも「見える」「見えない」の前に、卓球の激しい動きでサングラスがズレたら意味がありません。ズレが最初の負担になってしまうので、前提として、ズレないサングラスを提供する点にこだわりました。
そこで、当社独自の構造を採用したフレームに、水谷選手独自のレンズを装着しました。提供したモデル「E-NOX NEURON20’(イーノックスニューロントゥエンティ)」は、テンプルを下から出す「アンダーテンプル」を採用しています。
テンプルを下から出すことによって、上下動もしくは左右の動きに対しても安定感が生まれます。F1のレーシングカーもそうですが、低重心にすることによって速度が出てもブレにくくなります。また、テンプルの上にフレームがあることでサーブの邪魔にならない点も採用した理由です。
水谷選手がサングラスを装着して出場した試合は、競技中にズレないかドキドキしながら見ていました(笑)。
ぜひかけてみて、頭を振ってみてください。
――おぉ! 確かに、頭を振ってもズレないですね。かけたときの違和感もないですし、安定していますね。
鳥谷: テンプルを下にすることで、3D設計のような緩やかなアームを作ることができます。当社では「サングラスを“かける”から“まとう”イメージ」と表現しています。
このモデルはもともと、04年に、マラソンの野口みずきさんに向けて作ったものですが、当時は全く話題になりませんでした。ただ、当社独自の技術で、他社との差別化も図れますし、選手の意見を聞いて形にしたものなので、20年に向けたモデルの製作を開始していました。
キャップのつばが干渉しないようにレンズの両側を斜めに切り落とすなど、陸上長距離選手を意識して展開していましたが、まさか卓球でここまで目立つとは考えもしませんでした(笑)。
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