サラリーマンの給料がなかなか上がらない、納得の理由スピン経済の歩き方(4/6 ページ)

» 2021年12月28日 09時25分 公開
[窪田順生ITmedia]

厳しい日本の現実

 資金繰りの支援は手厚くなっているのに、ほとんどの中小企業・小規模事業者の規模は変わっていない。ということは、国から中小企業・小規模事業者にバラまかれている多額の補助金も同じ結果を招いている可能性が高い。つまり、「成長」を促しているのではなく、生き残るための新しいチャレンジやリストラなどの改革への意欲を削ぎ、「まあ、これだけあれば、なんとか生きていけるか」と安易な「現状維持」へ向かわせている恐れがあるのだ。

(出所:ゲッティイメージズ)

 もちろん、中小企業は419万社もあるので、全てがそうだなどと言うつもりは毛頭ない。ワンルームマンションで社員3人から始めたベンチャーが、今や社員300人を抱えるまで成長をしたなんてサクセスストーリーもあるように、順調に規模を拡大した小規模事業者だっているはずだ。そして、苦しいときは国からの補助金で助けられたということもあるかもしれない。

 ただ、データを見る限り、そういう会社は少数派で、ほとんどの中小企業・小規模事業者は補助金を受け取り、国や自治体の支援を受けながら結局、「現状維持」に落ち着いている。

 こういう厳しい日本の現実がある中で、賃金を上げていくには、中小企業・小規模事業者を「賃金を上げざるを得ない」という環境をつくっていくしかない。経営者の自発的な賃上げを待っていたら、あと30年経っても賃上げはできない。

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