サラリーマンの給料がなかなか上がらない、納得の理由スピン経済の歩き方(2/6 ページ)

» 2021年12月28日 09時25分 公開
[窪田順生ITmedia]

日本経済の「病」

 では、一体どうすれば、企業の99.7%を占める中小企業・小規模事業者を賃上げに促すことができるのか。

 個人的には、中小企業や小規模事業者(製造業などは従業員20人以下、商業・サービス業は従業員5人以下)の売却・買収という、いわゆる「スモールM&A」を国策として強力に支援していく一方で、「最低賃金引き上げ」という両輪を進めていくべきだと考えている。

平均給与の推移(出典:厚生労働省)

 という話になると脊髄反射で、「コロナ禍で最低賃金引き上げとは、貴様は中小企業に死ねというのか!」と怒り狂う人がいるが、そうやって中小企業経営者を甘やかしてきた結果が、韓国にまで抜かれた低賃金国家をつくってしまったという側面もある。

 また、「企業というのは業績が良くなれば自然と賃上げをする、そんなことをしなくても政府が補助金などで中小零細企業の成長を支えればいいのだ」という主張もよく聞くが、1963年にできた中小企業法に基づいて何十年も、中小企業・小規模事業者を補助金漬けにしてきた結果が、「いつまでも現状維持で成長できない」という日本経済の「病」をつくってきた、「不都合な真実」を直視すべきだ。

 2020年6月にまとめられた、経済産業研究所(RIETI)の『ものづくり補助金の効果分析:回帰不連続デザインを用いた分析」という報告書がある。

 ものづくり補助金は、中小企業が試作品の開発や新サービスの導入、設備投資の費用に充てる補助金で、生産性の向上につながる事業を公募して選ぶ。12〜20年度でこれまで計7000億円あまりを支出してきた。いわば、日本の中小企業支援を代表する政策だ。

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