CxO Insights

メタバースって何? 素朴な疑問をクラスターCEOに聞いたメタバース研究所も設立(1/4 ページ)

» 2021年12月29日 08時00分 公開
[樋口隆充ITmedia]

 2021年の大きなトレンドの一つが、VR技術などを活用し、アバターの姿になって他者と交流できるバーチャル空間「メタバース」ではないだろうか。10月には、SNSの「Facebook」を運営する米フェイスブック社が「Meta」(メタ)への社名変更を発表。同社は今後2年間で約55億円を投資し、欧州で1万人の人材を採用する方針を打ち出している。

 世界をリードしてきた米国のビッグテック企業グループ「GAFA」(Google、Amazon、Facebook、AppleにMicrosoftを加え、『GAFAM』とする見方も)の一角がメタバース事業に本格参入したことで、日本国内でもメタバースという言葉を耳にする機会が増えつつある。

photo VRゴーグルなどでバーチャル空間で交流する「メタバース」(提供:ゲッティイメージズ)

 その一方で、メタバースが一体どういったものなのか、よく理解できていない読者も多いのではないだろうか。記者も正直なところ、詳しいところまでは理解できていない。

 そこで、日本でメタバースプラットフォーム「cluster」(クラスター)を手掛け、11月には産学連携で「メタバース研究所」も設立した、クラスター(東京都品川区)の加藤直人CEOに解説してもらった。

photo メタバースプラットフォーム「cluster」

メタバースは「クリエイターファーストの世界」

 メタバースはVRゴーグルなどを装着し、他者と交流するバーチャル空間。英語で「超越した」「高次の」を指す「meta」(メタ)と、宇宙を意味する「universe」(ユニバース)を組み合わせた造語で、米国の作家ニール・スティーヴンスン氏が1992年に発表したSF小説「スノウ・クラッシュ」が由来とされている。

photo メタバースの原典として知られる『スノウ・クラッシュ』(出典:Amazon.co.jp)

 言葉の意味は理解したが、バーチャル空間で他社と交流できるサービスは、ゲームを中心にこれまでも存在していた。何が違うのだろうか。

 素朴な疑問を加藤CEOにぶつけると「メタバースはクリエイターファーストの世界だ」という答えが返ってきた。

 加藤CEOは「メタバースと呼ぶには、二つの構成条件が必要だ」と解説する。一つ目は、現実世界中心の経済活動が、バーチャル空間にシフトするという点だ。つまり、バーチャル空間に活動の主軸を移した上で「経済」という観点が必要なのだ。

 例えば、オンラインゲーム「フォートナイト」は、ゲーム内で販売するアパレルグッズの売り上げが年間30億〜50億ドル(日本円で3450億円〜5750億円)あるとされており、一部では「世界最大のアパレル企業の一つ」と指摘する意見も出ている。

photo 加藤CEOが「メタバースに近い」としたオンラインゲーム「フォートナイト」(出典:Epic game公式ストア)

 二つ目が、クリエイターファーストの観点だ。メタバースでは特定の誰かではなく、メタバース上で活動するクリエイターたちが、各自でゲームや建造物を自由に制作して生活している。

 クリエイターファーストにシフトした同様の事例として、加藤CEOはYouTuberを挙げ「動画はもともとハリウッドの映画会社や、テレビ局のプロ集団が制作した映像作品を楽しむというのが従来の楽しみ方だった。それが今では、素人が作ったコンテンツの方が、再生回数も多く、面白いという流れになりつつある」と指摘する。

 「メタバースは特定の誰かによって作られたものではなく、バーチャル上の住民たちが自分たちで自由に作り、自己発展する場。フォートナイト、マインクラフトあたりはメタバースの概念に近い」(加藤CEO)

 メタバースと呼ぶには、クリエイターファーストで、バーチャル空間内に経済圏を形成しているという要素が必要なのだ。

       1|2|3|4 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.