変革の財務経理

頻発する「経理ミス」 対処法と予防法を考える4つのミス(2/4 ページ)

» 2022年01月07日 07時00分 公開
[企業実務]

【1】ITシステムを利用する

 代表的な経理のミスは大きく4つに分類することができますが、なかでも(1)マニュアル作業での単純ミス、(2)業務の失念、(3)情報伝達ミスといった「うっかりミス」は、ITシステムを利用することによって予防できます。

(1)情報共有と自動化による予防

 例えば、機器の保守を行う企業の請求業務がITシステムを利用していなかったとします。

 現場の保守サービス担当者が保守サービス完了後に手書きで作業報告書を作成し、上司の承認を受けてから経理に提出、経理担当者は受け取った作業報告書を見ながら請求書を発行するとともに売上計上の仕訳入力を行うような場合です(図表2)。

photo 図表2

 このようなケースでは、作業報告書の作成から請求書発行・仕訳登録までの作業がバラバラで、多くの人の手による作業が必要なため、作業報告書の提出遅れ(情報伝達ミス)、経理担当者による請求データや仕訳データの入力ミス(マニュアル作業での単純ミス)、請求書の発行漏れ(業務の失念)など、ミスの発生しやすいポイントがいくつも潜んでいます。

 これに対して、一連の業務がITシステムを利用して効率的に運用されている場合はどうでしょうか。例えば、保守サービス担当者がITシステムに作業報告を入力したら、その情報が上司に共有され、上司が電子承認するとさらに経理部門に共有され、経理部門が内容をチェックして問題なければ自動的に請求書の発行と売上計上の仕訳登録がされるようになります(図表3)。

photo 図表3

 このようなケースでは、同じ情報(保守サービス担当者が入力した作業報告の情報)が上司や経理部門で共有され(情報共有)、共有された情報に問題がなければ自動的に請求書発行等の経理処理がされる(自動化)ため、多くのうっかりミスを防ぐことができます。

 また、このようなITシステムを利用したミスの予防は、請求業務以外でも有効です。例えば、ITシステムで経費精算の申請を行い、上司と経理部門によって承認された後、自動的に支払処理や仕訳登録がされるシステムを利用していれば、やはり情報共有と自動化によって経費精算業務で発生する多くのうっかりミスを予防することができます。

 このほか、紙を使った業務では、どこで業務が滞っているのかを把握することが容易ではありませんでしたが、ITシステムで業務の全体を管理していれば業務の滞りの把握も容易なため、失念によるミスの予防も期待できます。

 なお、以前はこのようなITシステムを導入するには高額なERPシステム等の導入が必要でしたが、最近ではクラウド会計等の進歩が目覚ましく、それほど高額でないものであってもさまざまな経理業務でIT化を進めることができるようになっています。

(2)入力アシスト等による予防

 ITシステムによるミスの予防は、情報の共有と自動化だけではなく、データ入力者の作業をアシストまたは制限することによっても期待できます。

 例えば、経費精算の申請においては、勘定科目や消費税の課税区分の選択ミスがよく起こりますが、経費精算で使用される勘定科目は通常、旅費交通費や会議費、交際費などある程度決まっており、また、それらの勘定科目ごとに一般的に使用される課税区分も決まっています。

 従って、ITシステムを利用した経費精算では申請者が使用できる勘定科目を制限し、かつ勘定科目を選択した時点で一般的な課税区分が候補として選択されるようにしておけば、経費精算に不慣れな申請者であっても間違った申請をする可能性が下がります。

 なお、旅費交通費のように国内分と海外分で一般的な課税区分が異なるような場合は、あらかじめ勘定科目を旅費交通費(国内)と旅費交通費(海外)に分けるといった工夫によって混乱を避けることができます。

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