経理のミスは、発生した瞬間に直ちに問題に発展することは通常なく、一定の期間内に修正できれば問題にはなりません。ただし、この「一定の期間」はミスの種類によって異なります。
具体的には、取引先等に直接関係するミスであれば取引先等にアクションを起こす前の期間であり、請求業務であれば請求書を得意先に送付するより前の期間になります。
一方、経費精算での勘定科目や消費税の課税区分、部門の選択ミスのように直接取引先等に関係しないミスについては、決算確定や税務申告等より前にミスを修正できれば通常問題にはなりません。
このようにミスはその種類によって問題なく修正できる期間が異なるため、チェックの方法を考えるにあたっては、いつまでなら問題なくミスを修正できるのかを考慮することが大切です。
請求ミスや支払いミスのように取引先等に直接関係するミスは、前述の通り金額の大小に関わらず影響が大きいですし、問題なくミスを修正できる期間も短いため、担当者による作業完了直後にダブルチェックで確実に発見することが大切です。
ただし、ダブルチェックにより全ての内容をくまなくチェックしようとすると、かえって注意が分散して請求や支払い等に直結するミスを見落としがちです。
例えば、買掛金や未払金の会計データに基づいて支払処理をするのであれば、買掛金や未払金の仕訳登録直後に請求書等の証憑と見比べながらダブルチェックする必要がありますが、仕訳データのうち費用勘定科目や消費税の課税区分、部門などの項目は支払いには直結しません。
一方で、支払先、金額、支払期日といった箇所のミスは支払いに直結し、ダブルチェックのタイミングで発見・修正できなければ誤った支払いにつながってしまいます。従って、ダブルチェックの担当者は「どの箇所のミスが誤った請求や支払い等に直結するのか」を意識しながらチェックすることが大切です。
またこのほかに、推移表等を利用した異常値のチェックをあわせて行うことも、大きなミスの発見に有効です。
例えば、得意先ごとの請求額の月次推移表を作成して「毎月10万円前後請求している得意先への請求予定額が今月は100万円になっている」といった異常値を抽出することによって、請求直前の最終チェックとして役立てることができます。
経費精算での勘定科目や消費税の課税区分、部門の選択ミス、振替伝票の貸借反対転記といった取引先等に直接関係しないミスについても作業完了直後のダブルチェックは必要ですが、これらのミスは一般的には決算確定や税務申告の期限等のタイミングまでに修正できれば問題にはならないため、年次決算や月次決算、税務申告等の作業時にチェックリストを利用して発見することが有効です。
具体的には、「売掛金残高が売掛金台帳の明細と一致しているか」「消耗品勘定のなかに固定資産に該当するものがないか」「消費税の課税区分に誤りがないか」といった具合に、あらかじめチェック項目を作成してチェックします。またこのとき、「一定金額以上のものは重点チェック対象とする」「月次推移表等を使って異常値を抽出する」などの方法をあわせて実施し、金額の大きなミスがないか特に注意して発見できるようにすることも大切です。
橘隆行税理士事務所/税理士
「日々の経理業務が複雑」と悩む中小企業のために、「経理業務をもっとシンプルに、もっとわかりやすく」をモットーに、ビジネスに専念できる環境を提案する。
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