令和3年度(2021年)の税制改正で、電子帳簿保存法が改正されました。税金関係の書類を、電子化して保存するための条件が大幅に緩和されました(詳細は別記事「令和3年度の電子帳簿保存法 「うちは関係ない」とは言えない、2つの注意点」をご覧ください)。しかし、具体的な法対応を進めると「分からない」「判断に迷う」という声もチラホラ。本連載では、公認会計士の中田清穂氏がそうした疑問にQ&A形式でお答えします。
Q 業務用の文房具やコーヒーを、Amazon.co.jpや楽天などで購入しています。領収書はWebサイトからダウンロードし、最終的にはプリントアウトして保存しています。このような場合にも、紙とは別に電子的に保存する義務があるのでしょうか。
A 2022年1月1日以降は、電子的に保存する必要があります。なお、プリントアウトして紙で保存すること自体は問題ありませんが、その必要はありません。
Webサイトからダウンロードして、請求書や領収書などのデータを入手した場合には電磁的方式によって受け取ったことになります。つまり「紙で受け取る方式」ではないということです。
電子帳簿保存法の改正により、ダウンロードして入手したデータをプリントアウトして紙で保存することが認められなくなりました。2022年1月1日から施行されます。
このため、紙で保存してはいけないわけではありませんが、電子帳簿保存法では電子的に保存する義務があります。電子的に保存する方法としては、以下の3つのうち、いずれかで対応する必要があります。
なお、上記(1)〜(3)のどの方法を採用しても、以下の検索要件を満たして、電子的に保存する必要があります。
「この日の請求書を全部見せてください」「この取引先の領収書を全部見せてください」などといわれたときに、検索機能を使って速やかに見せられるようにしなければいけません。
「4〜6月までの請求書を全部見せてください」「30万円以上の領収書を全部見せてください」などといわれた時に、検索機能を使って速やかに見せられるようにしなければいけません。
「4〜6月までで、30万円以上の、A社の請求書を見せてください」などといわれたときに、検索機能を使って速やかに見せられるようにしなければいけません。
ただし、以下の場合には、上記の検索要件は必要ありません。
問4 当社は以下のような方法により仕入や経費の精算を行っていますが、データを保存しておけば出力した書面等の保存は必要ありませんか。
(中略)
(2)インターネットのホームページからダウンロードした請求書や領収書等のデータ(PDFファイル等)又はホームページ上に表示される請求書や領収書等のスクリーンショットを利用
(中略)
【回答】
(1)〜(7)いずれも「電子取引」(法2五)に該当すると考えられますので、所定の方法により取引情報(請求書や領収書等に通常記載される日付、取引先、金額等の情報)に係るデータを保存しなければなりません。
令和3年度の税制改正前はそのデータを出力した書面等により保存することも認められていましたが、改正後は、当該出力した書面等の保存措置が廃止され、当該出力した書面等は、保存書類(国税関係書類以外の書類)として取り扱わないこととされました。
データ保存に当たっては、以下の点に留意が必要です。
イ (1)及び(2)については一般的に受領者側におけるデータの訂正削除が可能と考えますので、受領したデータに規則第4条第1項第1号のタイムスタンプの付与が行われていない場合には、受領者側でタイムスタンプを付与すること又は同項4号に定める事務処理規程に基づき、適切にデータを管理することが必要です。また、対象となるデータは検索できる状態で保存することが必要ですので、当該データが添付された電子メールについて、当該メールソフト上で閲覧できるだけでは十分とは言えません。
(後略)
本稿で解説した内容について、12月10日に公表された自由民主党の税制改正大綱では、2年間の経過措置が設けられています。
まだ、正式なものではありませんが、法令改正により正式なものとなる可能性は非常に高いと思います。
以下、税制改正大綱の抜粋です。
電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存制度について、令和4年1月1日から令和5年12月31日までの間に申告所得税及び法人税に係る保存義務者が行う電子取引につき、納税地等の所轄税務署長が当該電子取引の取引情報に係る電磁的記録を保存要件に従って保存をすることができなかったことについてやむを得ない事情があると認め、かつ、当該保存義務者が質問検査権に基づく当該電磁的記録の出力書面(整然とした形式及び明瞭な状態で出力されたものに限る。)の提示又は提出の求めに応じることができるようにしている場合には、その保存要件にかかわらず、その電磁的記録の保存をすることができることとする経過措置を講ずる。
(注1)上記の改正は、令和4年1月1日以後に行う電子取引の取引情報について適用する。
(注2)上記の電子取引の取引情報に係る電磁的記録の出力書面等を保存している場合における当該電磁的記録の保存に関する上記の措置の適用については、当該電磁的記録の保存要件への対応が困難な事業者の実情に配意し、引き続き保存義務者から納税地等の所轄税務署長への手続を要せずその出力書面等による保存を可能とするよう、運用上、適切に配慮することとする。
株式会社Dirbato(ディルバート)公認会計士
青山監査法人、プライスウォーターハウスコンサルタント株式会社を経て、株式会社ディーバを設立。連結経営システムDivaSystemを開発し事業を展開。導入実績400社を超えた、上場1年前に後進に譲り独立。
財務経理の現場と経営との関連にこだわり、課題を探求し、解決策を提示し続ける。財務経理向けにサービスを提供する業者へのコンサルティングも実施。
現在、株式会社Dirbato(ディルバート)で財務経理DX事業責任者として活動中。
https://www.dirbato.co.jp/information/20210701/
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