マネーフォワードが再度、成長に向けて戦略を転換する。いったんEBITDAで黒字化したが、今後広告宣伝費などに大きく投資を続け赤字となる計画を1月14日、決算発表で明らかにした。継続的に年率30〜40%で売上高を成長させることをコミットする。特に、ストック型収入であるSaaSのARR(年間定期収益)にフォーカスし、早期に200億円規模を目指す。
マネーフォワードにとって、2021年11月期通期決算は、上場後の中期計画が一区切りつく重要なマイルストーンだった。SaaS企業としては早期の17年に上場した同社は、21年11月期でのEBITDA(利払い前、税引き前、減価償却費前利益)黒字化をコミットしていたからだ。
現在でこそ、SaaS企業は高成長が継続する代わりに赤字が長く続くビジネスモデルだということが理解されてきているが、当時は投資家からの黒字化期待が強かった。その期限となる21年11月期決算では、EBITDAは4.3億円となりコミットを達成。5期連続での、売上高、営業利益、EBITDAいずれも期初見通し内での着地を実現し、「投資家へ約束したコミットメントを守ることが重要」だと、辻庸介社長は胸を張った。
次なる投資家へのコミットは成長だ。直近5年間も年率40%程度の売上成長率を続けてきたが、売上高が150億円を超えるまでに成長した今後も、継続的に30〜40%の売上成長をコミットする。
業績の最重要KPIはSaaSのARRだ。21年11月末時点のARRは112億2700万円。翌22年11月期末には、40〜50%増加させ157億1800万〜168億4100万円を見込む。翌23年11月期はこの成長率を継続し、「早い段階でARR200億円を目指す」(辻氏)とした。
高い成長率のために投資を行い、EBITDAは再び赤字となる。22年11月期は第1四半期だけで17億〜19億円の広告宣伝費を投下。顧客獲得を加速させる。
「ARR1億ドル(113億円)の会社はまだ先行投資フェーズだ」。海外の投資家からは、グローバルなSaaSのスタンダードとしてこう見られていると辻氏は話す。いったん黒字化したEBITDAを赤字にしても、再度投資に踏み切るのは、日本の上場SaaS企業をけん引してきたという自負もあるからだろう。
「米国株式市場のほうが圧倒的に成長率が高い。日本でも成長株があることを実績で示したい。米国銘柄に負けない銘柄になっていきたい」(辻氏)
そのため、中長期においても黒字化や損益についてはこだわらない。「赤字はほとんど広告宣伝費。黒字化はやろうと思えばいつでもできる。そこは経営の意思だ。中長期の企業価値最大化が優先すべき目標。短期的な黒字赤字にこだわらず、その目標に向けてやっていく」(辻氏)
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