東京証券取引所(以下、東証)は1月11日、4月4日に移行予定の新市場区分について、全上場企業3777社の選択結果を発表しました。概要は図表1の通りで、東証1部上場企業2185社のうち、実質最上位の「プライム市場」を選択した企業は1841社となり、残りの344社は「スタンダード市場」を選択しました。また、東証2部上場企業474社は、すべてスタンダード市場を選択しました。
新興企業では、ジャスダック上場企業694社のうち、スタンダード市場を選択した企業は658社で、残りの36社は「グロース市場」を選択しました。そして、マザーズ上場企業424社は、1社のみスタンダード市場を選択し、残りはグロース市場を選択しました。この結果、プライム市場を選択した企業は1841社、スタンダード市場は1477社、グロース市場は459社という結果になりました。
なお、東証1部上場企業でプライム市場を選択した1841社のうち、296社は「上場維持基準の適合に向けた計画書」を開示している企業です(図表2)。これらの企業は、プライム市場の上場維持基準を満たしていないものの、計画書を開示することによって経過措置の適用を受け、プライム市場に上場することになります。ただ、この経過措置の適用期間は「当分の間」とされ、現時点で期限は定められていません。
プライム市場以外でも、計画書開示による経過措置の適用を受ける企業が見受けられます。具体的には、スタンダード市場を選択した1477社のうち、212社(東証1部上場企業12社、東証2部上場企業72社、ジャスダック上場企業128社)が、グロース市場を選択した459社のうち、46社(ジャスダック上場企業17社、マザーズ上場企業29社)が、それぞれ経過措置を受けることになります。
今回、全上場企業が新市場区分を選択しましたが、経過措置による上場維持基準が緩和される企業は、全体の約15%に達しています。経過措置は、新市場区分への移行にあたり、市場にあまり大きな影響がでないよう配慮したものと思われますが、前述の通り、経過措置に期限がないため、4月4日以降は、上場維持基準を満たさないまま新市場に上場を続ける企業が一定数存在することになります。
また、東証はプライム市場をグローバルな投資家向けの市場と位置付けていますが、海外の大手運用会社などの投資対象は時価総額5000億円以上とみられ、プライム市場選択1841社のうち、時価総額が直近で5000億円以上の企業は240社程度であり、全体の約13%に過ぎません。このように、東証の市場改革はまだ始まったばかりで、内外投資家の評価を高めるには、ここから更なる改革の進展が期待されます。
旧東京銀行(現、三菱UFJ銀行)で為替トレーディング業務、市場調査業務に従事した後、米系銀行で個人投資家向けに株式・債券・為替などの市場動向とグローバル経済の調査・情報発信を担当。
現在は、日米欧や新興国などの経済および金融市場の分析に携わり情報発信を行う。
著書に「為替相場の分析手法」(東洋経済新報社、2012/09)など。
CFA協会認定証券アナリスト、国際公認投資アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員。
© 三井住友DSアセットマネジメント
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