オミクロン株に対する国際金融市場の反応市川レポート 経済・相場のここに注目

» 2021年11月29日 16時57分 公開
[市川雅浩三井住友DSアセットマネジメント]
三井住友DSアセットマネジメント

オミクロン株の感染拡大に対する警戒感から、世界の金融市場は先週末リスクオフの動きが加速

 新型コロナウイルスの変異株「オミクロン株」の感染拡大に対する警戒感から、11月26日の金融市場では、広くリスクオフ(回避)の動きがみられました。日米欧など主要国の株価指数は軒並み下落し、ドイツ株式指数(DAX)やフランスCAC40指数の下落率は4%を超えました。また、WTI原油先物価格は前営業日比10ドル24セント(13.1%)安の1バレル=68ドル15セントと、70ドルを割り込んで取引を終了しました。

 こうしたなか、米国の利上げ観測も後退し、フェデラルファンド(FF)金利先物市場が織り込む2022年の米利上げ回数(0.25%の利上げ回数)は、前営業日の2.8回から2.1回に低下しました。米10年国債利回りも前営業日から約16ベーシスポイント(bp、 1bp=0.01%)低下し、1.47%台で取引を終え、ドル円は一時1ドル=113円05銭までドル安・円高が進行しました。

日米欧の中央銀行総資産残高と株価

感染急拡大を受け日本政府は水際対策を強化、国内でオミクロン株の検査態勢も強化の流れ

 足元では、オミクロン株の感染が広がっています。これまで、南アフリカ、ボツワナ、香港、イスラエルで感染が確認されていましたが、日本時間午前7時30分現在、イギリス、ドイツ、ベルギー、イタリア、オランダ、デンマーク、オーストラリア、チェコ、カナダでも確認され、感染は13の国と地域に広がっています。また、フランスでも感染の疑いのある症例が報告されています。

 感染の急速な拡大を受け、イスラエル政府やオーストラリア政府などは水際対策を強化しています。日本政府も対策に取り組んでおり、現在、南アフリカなど9カ国からの入国者に対しては、検疫所が用意した施設で10日間の待機を求めています。また、国立感染症研究所が11月28日、オミクロン株を最も警戒レベルの高い「懸念される変異株(VOC)」に指定したことで、今後はオミクロン株の検査態勢が強化されることになります。

市場は悲観シナリオを想定、ただ仮に実現しても流動性相場が株安の度合いを軽減する見込み

 オミクロン株について、現段階ではまだ不明なところも多いのですが、既存のワクチンが効きにくく、感染力はデルタ株よりも強いとの見方もあります。ただ、すでに欧米のワクチンメーカーは、既存のワクチンの有効性について検証に取り組んでおり、米ファイザーと独ビオンテックは、有効性が確認されない場合、100日以内に新しいワクチンの供給を始めると報じられています。

 11月26日の世界の金融市場は、感染拡大について、かなり悲観的なシナリオを一気に織り込んだものと推測されます。したがって、ここからはオミクロン株の実際の感染状況や、各国の政策対応、ワクチンメーカーの検証結果などを見極める時間帯となり、リスクオフの動きが一旦小休止することも想定されます。なお、悲観シナリオの実現性が高まった場合、流動性相場が維持されるため、これまでのように、株安の度合いは一定程度、軽減されることが期待されます(図表)。

市川 雅浩(いちかわまさひろ) 三井住友DSアセットマネジメント チーフマーケットストラテジスト

旧東京銀行(現、三菱UFJ銀行)で為替トレーディング業務、市場調査業務に従事した後、米系銀行で個人投資家向けに株式・債券・為替などの市場動向とグローバル経済の調査・情報発信を担当。

現在は、日米欧や新興国などの経済および金融市場の分析に携わり情報発信を行う。

著書に「為替相場の分析手法」(東洋経済新報社、2012/09)など。

CFA協会認定証券アナリスト、国際公認投資アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員。


  • 当資料に基づいて取られた投資行動の結果については、三井住友DSアセットマネジメントは責任を負いません。
  • 当資料の内容は作成基準日現在のものであり、将来予告なく変更されることがあります。
  • 当資料に市場環境等についてのデータ・分析等が含まれる場合、それらは過去の実績および将来の予想であり、今後の市場環境等を保証するものではありません。
  • 当資料は三井住友DSアセットマネジメントが信頼性が高いと判断した情報等に基づき作成しておりますが、その正確性・完全性を保証するものではありません。
  • 当資料にインデックス・統計資料等が記載される場合、それらの知的所有権その他の一切の権利は、その発行者および許諾者に帰属します。
  • 当資料に掲載されている写真がある場合、写真はイメージであり、本文とは関係ない場合があります。

© 三井住友DSアセットマネジメント