同チャンネルは、10カ月で36倍に登録者数を伸ばしており、この数字だけ見るとかなり順調に見える。一方、ハヤシ氏は「更新頻度と赤字事業」という2つの課題を挙げる。
「現在の週1回の更新では、新規登録者の伸びに限界があります。動画をアップする火曜日は再生数も登録者数も伸びますが、週末が近づくにつれて落ち込んでいきます。そのタイミングでまた動画をあげられると伸びをキープできるのですが、現状は難しいです。
週2回更新にしたいけど、動画のクオリティーは落としたくないという葛藤があります。更新頻度をあげるために撮影を短縮化するフォーマットを作ったり、30分で撮影を終わらせたりなどやってみたのですが、結局ある程度自由に1時間半ほど撮影する今のスタイルに戻ってきてしまいます。
出演者が全員素人なので、台本でガチガチに固めずに余白を持たせて自由にやってもらうのが一番面白くなるんです。素直な感想や楽しさを出すとしたら今の仕組みがいいかなと」(ハヤシ氏)
もう一つの課題は、赤字続きの事業だ。グッズ販売は好調ではあるものの、YouTubeの広告収入だけでまかなうのは難しく、金額面だけでいうと収支はマイナス。ただ、YouTubeがきっかけで売れた商品も複数あるという。年に数本売れるだけだったガラスペンがフェア開催時には1週間で数百本売れたのだ。
動画とフェア開催を連動させることで継続的に売り上げを確保できそうだが、YouTubeの目的は「有隣堂のファンを作ること」。収支を目的にはしたくないという。
「紹介した商品などを販売していく気持ちはあります。動画を出して、反響が大きかったからフェアを開催するという流れはいいですが、商品を売るために動画を作るという自社の広告案件のようにするのは避けたいと思っています」(経営企画本部 広報・秘書室 鈴木宏昭課長)
「書店はここ何十年か成功事例がない」――松信社長が話していたことだという。出版不況と言われ続ける中、「有隣堂しか知らない世界」が書店業界に風穴をあけ、成功事例として羽ばたく日は訪れるのだろうか。
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