民間企業の東京メトロは、もともとは営団地下鉄だった。私鉄のような存在感を示しながらも、公営のようなものだった。都営地下鉄やバスは東京都交通局が運営している。
民営化、民営化と多くの人は口々に叫ぶ。鉄道はビジネスの側面も大きいことは言うまでもない。多くの人に乗ってもらわなければならず、採算も取る必要がある。そのためには不動産関連事業も行う。
しかし公共交通事業には、本来「人を乗せて安全に運行する」というビジネス基盤がある。大阪では市営地下鉄が民営化され、「Osaka Metro」となった。営利事業としての側面を強めよう、各種開発事業などをしようという考えである。だがコロナ禍で経営は厳しくなった。
都営交通は、東京の交通ネットワーク上必要ではありつつも、利益になりにくいところを補完するために、必要な公営交通だ。東京メトロやJR東日本が営利事業として稼ぎにくいところにも、公共交通サービスを提供するためには必要な存在である。
しかも、交通局は採算の取りやすくなった地下鉄と、採算の取りにくいバスとを組み合わせ、公共交通としての使命を果たしている。都は高齢者向けにシルバーパスを発行、鉄道も含めて都営交通は格安のサービスを提供している。シルバーパスはバス中心であるものの、都営地下鉄はバスの代わりという側面もあり、都営地下鉄でも利用できるようになっている。
ビジネスであり、ビジネスでない都営交通は、東京で生活している人のために、重要な足として存在する。民間にはできない公共サービスのために欠かせないのだ。
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