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CFOを目指したい人の登竜門? 「FP&A」とは、どんな仕事なのか“会計の専門家”にとどまらない(2/2 ページ)

» 2022年01月26日 13時30分 公開
[鷲巣大輔ITmedia]
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なぜ今FP&Aが着目されているのか?

 近年、日本においてもFP&Aが注目をされてきた背景として、コーポレート・ガバナンスの強化が「待ったなし」の状態になっていることが考えられます。

 2014年に経産省が発表した通称「伊藤レポート」では、「日本企業が競争優位性を発揮するためには、積極的な投資が必要。その原資として国内外のリスクマネーを取り入れなくてはいけない、それはすなわち投資家の期待するリターンを継続的に生み出す必要があることを意味する。それを『ROE8%』という具体的指標を超すべきだ」との旨が提示されました。

 この伊藤レポートによって、本質的には「事業を成長させるためには、継続的な資金調達(特にリスクに対応できる株主資本の調達)をし、資金提供者の期待以上のリターンをビジネスから得て、資金提供者に還元していくことで、このサイクルを回す必要がある」ことが再度、明示化された訳です。つまり、逆に考ええば、このサイクルを回すことができない企業は、国内外の資金を調達することが難しくなることを意味しています。

 ガバナンスとは、端的に言えば「説明責任を果たすこと」です。企業は成長のための選択をする度、「この投資はなぜ合理的なのか」「この買収額はどれほど妥当なのか」「なぜこの組織変革をこのタイミングで実施するのか」を、株主債権者(つまりは資金提供者)に対して、「これはあなた方にとっても意義のある判断なのだ」と説明する必要があります。この際、コーポレート・ファイナンスへの理解は欠かせません。

 もちろんステークホルダーは資金提供者だけではありません。昨今はSDGsに注目が集まっており、多種多様なステークホルダー・関係者に対しての説明責任を果たす重要性が増しています。日本において社外取締役の重要性が今までになく増しているのも、「その経営判断は、多種多様なステークホルダーに対してしっかり説明ができる判断なのか」を担保することがより重要となっていることの表れでしょう。

 多種多様なステークホルダーと対峙する経営者にとって、その領域における専門性を持つプロフェッショナルは貴重な存在になります。FP&Aは会計の専門性を持つプロフェッショナルとして、資金提供者というステークホルダーに対し説明責任を果たすために必須のポジションです。そして何よりも資金提供者の期待に応えるような経営判断をしているかどうか、という視点を経営チームに投げかけることで、最終的な経営判断に影響を与える自立した役割でもあります。

 1月27日公開の「経営も分かる『CFO候補』が理解しておくべき、経営の“本質”とは?」では、「合理的な経営判断」を支える、FP&Aが意識すべき考え方や指標をお伝えします。

著者プロフィール

鷲巣大輔

グロービス経営大学院准教授/株式会社FP&A研究所代表取締役

一橋大学商学部卒業。米系消費財メーカーに入社後、コーポレートファイナンスからキャリアをスタートする。以後一貫してFP&A(Financial Planning & Analysis)をベースとした経営戦略策定、事業部コントロールに従事。スタートアップ企業CFO、米系消費財企業のアジア・パシフィック地区のCFOを務めた後、PEファンド投資先企業のFP&A、経営企画を担当。2021年にFP&Aの力で組織を強くすることをミッションに株式会社FP&A研究所を創立し、代表取締役を務める。2007年からグロービス経営大学院にて、コーポレートファイナンスの講義を担当する。


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