外食企業の海外進出が、コロナ禍で加速している。
2021年は回転寿司の「スシロー」が中東のドバイに進出したり、セルフうどんの「丸亀製麺」がロンドンに進出したりと、これまで日本の外食が積極的に出店しなかった地域で成功するケースが増えている。
また、20年には「CoCo壱番屋」がカレーの本場・インドに進出したのも話題になった。
国内ではオミクロン株の感染が拡大し、まん防(まん延防止等重点措置)が全国34の都道府県に発出。コロナ禍の収束が見えなくなっているが、時短を余儀なくされた外食企業も、コロナ後を見据えて動き始めている。そうした行動のうちの1つが、海外への進出だ。
日本は、コロナ禍における経済の回復が世界的にも遅い。また、コロナ前の成長率も世界最低水準だったことから、事業を拡大させるには海外への展開が欠かせないという考え方が、外食産業で広がっている。
900円でも「高い」とされる日本のラーメンが、欧米では2000円以上でも普通に売れるというのはよくいわれることだ。他の外食でもほぼ同様で、日本の外食は先進国ではとても安い。
しかも、ミシュランの星付きレストランが多い都市のトップ5のうち3つは東京、京都、大阪だ。残りの2つはパリとニューヨーク。ミシュラン的には日本はダントツの美食の国であり、世界で和食がブームになるのも当然。高い料理がおいしいというのは世界共通だが、日本の場合には、美食への意識が徹底していて、「高くてうまい」お店が多い。そのうえ、安い料理のお店も全般に「うまい」といわれている。
世界中どこの国の人も、安くてうまいものが好きだ。このまま行くと、対外比較で、日本人の購買力は相対的にますます下がって貧しくなる。国内の外食は低価格競争になると予想される。そのため、アフターコロナでは海外からお得な日本の外食を求めて、コロナ前以上にインバウンド需要が沸騰する。
IMF(国際通貨基金)によれば、20年における世界の一人当たり購買力平価GDP(USドル)は日本が33位で、G7ではイタリア(35位)と最下位を争っている。シンガポール(2位)、香港(11位)、台湾(15位)、韓国(28位)よりも既に下位である。購買力平価という基準自体があてにならないという意見もあるが、ニューヨークから来た人はもちろん、上海の人も日本の外食のランチの値段が安いと思うようだ。
外食企業は、感染症対策に慎重を期するあまり、経済回復の兆しが見えない日本の現状に痺れを切らしている。世界的な和食ブームを追い風に、経済を動かそうとしている海外に力点を移す構えを見せている。
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