テレビ放送されるアニメのほとんどには、ある共通項があります。それは「放送尺=放送時間枠の長さ」。定番は30分で、CM時間などを抜いた動画配信では24分程になります。
スマートフォンが生活の必須アイテムとなり、移動時間や空き時間などで情報コンテンツを見ることが当たり前となりました。TikTokの一般化や、昨年スタートした短尺動画「YouTube Shorts」に見られるように、動画の世界もコンテンツのショート化が進んでいます。
こうした流れの中にあり、「30分」という尺は“コンパクトに作品をしっかり楽しめる時間の長さ”としては、今の人々にマッチしていると思われます。このことは、先ほど紹介したランキングの12位に、アニメ以外では初となるドラマ「孤独のグルメ」(これも放送枠は30分!)がランクインしていることからも推察されます。
以前、仕事でご一緒したことのあるタレントの東野幸治さん(彼はアニメ好きなのです)は、「アニメの尺ってちょうどいいんだよね。ちょっと時間が空いた時にみられるから。2時間だとわざわざ時間作らないといけないじゃない」という趣旨のことをご自身のYouTubeで発言されていました。
忘れてはならないのは、これまで述べてきたことの前提は、自分所有デバイス(スマホ/タブレット/PC/テレビなど)で視聴するケースということです。
例えば、これが、映画館で鑑賞するとなると違ってきます。映画館で30分となると、物足りなく感じますよね。映画館という空間における「モード=じっくりエンタメを楽しみたい」では、2時間以上が“ちょうどいい時間”となります。それぞれの状況/状態/モードにおいて“適正な時間=ちょうどいい時間”があるということです。
少し話はそれますが、この観点を踏まえると、現在のテレビのゴールデンタイムにおけるバラエティ番組の枠が1時間というのは、もしかすると再考の余地があるのかもしれません。
MMD研究所の調査によると、YouTubeの1日あたりの平均視聴時間は「30分未満」(32.0%)が最多でした。YouTubeコンテンツの内容には、バラエティ番組的なものが多いです。
30年近く前のテレビのことを思い返してみると、19時台は30分番組2本立てだったなという記憶もあります。そして、アニメは、昔も今も30分枠が一般的でした。
ヒットを産む上で、作品の面白さや商品のクオリティーの高さはもちろん重要です。それとあわせて、世の中の生活スケジュール(現代の時間消費の生理的感覚)を意識することが重要ではないでしょうか。人は無意識のうちにその感覚に従っています。人間にとって「時間」以上に貴重な「有限」の資産はないのです。
金田有浩(かねた ともひろ)
≪株式会社サイコー!代表 “脳ミソで汗をかく!”をポリシーに、コンテンツ制作から新規事業開発まで、あらゆるテーマを「エンタメ視点」で捉え、企画を生み出し具現化するプランニングプロデューサー。大学を卒業後日本テレビに入社。20年間の在籍中「マネーの虎」「とんねるずの生ダラ」「ロンQハイランド」「行列の出来る法律相談所」など、数々のバラエティ番組をプロデュース。その後、NHN Japan(ハンゲーム)に転職後LINEを経て独立。
自ら立ち上げた「株式会社サイコー!」(東京都渋谷区)では、30年にわたるメディアを中心としたコンテンツプロデュースの経験を生かし、番組の企画やプロデュースにとどまらず、エンタメコンテンツ創りの知見を生かしたビジネスコミュニケーション創造、新規事業開発のコンサル・プロデュースに行政と組んでの地域創生プロジェクトまで幅広く活動。
現在のMyプロデューステーマは、“50代の為のプレミアムエンタメ体験創出”と“昆虫エナジーで人と地球の美しい未来を創るSDGs活動”。ご興味のある方は是非ご一緒に!
ちなみに、社名を漢字で書くと「最考」です。
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