「面接で給与や休暇、福利厚生について質問すると、仕事への興味が薄いと捉えられます」
「待遇に関する質問はマイナス印象を持たれる可能性があるので控えるようにしましょう」
同様のアドバイスは就活マニュアル本や転職サイトのみならず、教育現場においてさえも普通になされている。もちろん、面接で待遇「しか」質問しないとか、応募先のWebサイトに書かれているような情報を確認せずに質問する、といった行為はさすがにナンセンスだ。しかし、「待遇について確認するのはNG」というメッセージはそれこそNGである。こんな前時代的なアドバイスによって、給与や休日について胸を張って説明できないような低レベルの企業を擁護することにもなりかねず、大いに疑問を抱いている。
そもそも、給与や労働時間などの労働条件は、企業側が採用時に明示しなければならないと労働基準法第15条で定められている。労働者の権利であるし、求職者にとっても大切な情報なのだから遠慮なく確認すべきなのだ。労働環境が整った企業であれば、自社の給与水準や労働環境について自信をもって説明できるはずだし、「当社の育休復職率は100%です」などと自慢さえするだろう。逆にそんな質問程度で「マナー違反だ」「やる気がないのか」などと逆上するような企業は、満足な給与も労働環境も提供できない狭量な会社と判断してよい。嫌がるのはブラック企業だけなのだ。
話を戻そう。今後、人事が炎上した企業と同様の被害に遭わないために、各社として対策しておくべきことは何だろうか。要点は「基本となる体制整備」「徹底した従業員教育」「デリケートなテーマへの感受性を持つ」「ポジティブ広報を意識する」ことである。
基本的な体制整備としては、業務利用/プライベート利用を問わず、従業員がSNSを使う際の心構えや注意点、トラブル発生時の社内緊急連絡先や対応方法などをまとめた「SNS利用ガイドライン」を作成、共有しておくことだ。また機密情報や個人情報には一般社員がアクセスできないよう、厳重なセキュリティ対策を行うことも必要だろう。合わせて、就業規則にもSNSガイドラインを反映し、緊急時に柔軟な対応ができるようにするとともに、懲戒規定も見直し、悪質なケースには処分できるようにしておくとよい。
従業員教育としては、全社員を対象とした「SNSリスク対策研修」を実施しておきたい。単なる座学では飽きてしまうので、「自分たちの部門で炎上トラブルが発生したらどうすべきか」と考えること自体を研修とし、組織ごとの独自ルールを皆で作り上げるのがおすすめだ。それによってメンバー自身にもルールへの思い入れと当事者意識が生まれ、生きたルールとして機能することが期待できる。
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