少なくとも数字だけを見る限り、GENDA SEGA Entertainmentの経営環境は厳しい。21年3月期通期の数字を見ると、売上高が287億6000万円に対し、営業利益は23億800万円の赤字だ。純損失は126億8400万円に上る一方、純資産は60億2100万円、総資産で170億3800万円という状況だ。
GENDAグループの本業は業務用ゲーム機の実店舗へのレンタル設置、そしてオンラインクレーンゲームというジャンルだ。オンラインクレーンゲームは、スマートフォンアプリを通じてクレーンゲームの実機をオンラインで操作するというもので、サイバーステップが開発した「トレバ」が草分けとなり普及したものだ。
オンラインクレーンゲームは、“商品をつかんで落とす”というクレーンゲームの基本にとどまらないゲーム性を持つ。いくつかのモノを積み重ねたり、ボールをパズルのように並べたり、リングを突起に引っ掛けたり──など多彩だ。「望みの景品を獲得した場合は手元に景品が送られてくる」という設定の台では、プレイステーション5など入手が難しい商品が景品に設定されている場合もある。
すでにゲームセンター売り上げの大部分はクレーンゲームといわれる。こうした中、オンラインクレーンゲームは、国内で200億円程度の市場規模にすぎない。現時点では実店舗でのクレーンゲームに迫るものではない。
しかし、GENDAの事業そのものが実店舗のゲームセンターと強く結び付いているので、本格的にゲームセンター事業のDXを行えば、収益性が高まる可能性があるのではないだろうか。
GENDA GiGO Entertainmentは商号を発表した直後の1月31日にも宝島を買収し、施設の商号こそ変更しないものの全国24店舗を傘下に収め、全国の店舗数を200店舗以上にまで拡大した。
日本アミューズメント産業協会(JAIA)が発表している最新の業界動向は、19年度の数字だが、このときのゲームセンターの市場規模は7055億円で前年比微増だった。ビデオゲームの売り上げは下がっていたものの、クレーンゲームに代表される“景品もの”の売り上げが増加したためだ。
その後、コロナ禍の影響もあってビデオゲームの売り上げはさらに下がっていると予想されるが、19年の段階でもビデオゲームの売り上げは全体の15%でしかなく、55%は景品ゲームだった。
景品ゲームとはすなわちクレーンゲームのことだが、コロナ禍でゲームセンターの集客力が落ちていることを考えれば、そのままでは事業を伸ばしていくことは難しい。しかし、オンライン化によってゲームセンター内の装置稼働率を高めることができれば、装置ごとの売り上げは高めることができる。
長い間、クレーンゲーム=景品ゲームとなってきた背景には、他に有効なアイデアがないからなのかもしれないが、オンラインクレーンゲームには、オンライン化によってゲーム性を高める工夫も見られる。
オンラインとオンサイトの両方を見据え、ゲームの設計、ルール設定などを見直すことで景品ゲームのDXを進められるなら、店舗とオンラインの両方の売り上げを最適化できる可能性はあるだろう。
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