「SEGA」ブランドで運営している全国のゲームセンターの名称が「GiGO」(ギーゴ)ブランドに変わる。運営元のGENDA SEGA Entertainmentが1月28日に発表した。商号もGENDA GiGO Entertainmentへと変更されたことで、今後はSEGAブランドがゲームセンターから失われていくことになる。
そんなニュースに昔からのゲームファンの中には、少しセンチメンタルな気分になった人もいたようだ。ネットでは、セガがとうとうゲームセンターというフォーマットを諦め、撤退するかのような落日の寂しさを語る声も散見された。
もっともSEGAブランドを主語に語るのであれば、その本体であるセガサミーホールディングスは、2020年末時点でGENDA SEGA Entertainmentからほとんどの出資を引き上げており、セガ(セガサミー)はゲームセンターから事実上撤退していた。
今回のブランド変更は、クレーンゲームを事業主体とするGENDAが、単独でゲームセンターという箱の運営を継続し、自社ブランドで展開することを表明したという見方が正しい。SEGAブランド中心で捉えるなら、後ろ向きに見えるかもしれないが、GiGOブランドとしては新しい投資、挑戦となっていくわけで、前向きなものといえるだろう。
事業環境をいうのであれば、スマートフォン、携帯型ゲーム機、専用ゲーム機、ゲーミングPCなど、インターネットを通じたゲームコミュニティーが完成されている現代において、ゲーム好きが集まる“ゲームセンターコミュニティー”を実店舗で展開する意味は薄れている。
そうした中、クレーンゲームやプリクラなど、実体験とエンターテインメントがリンクする領域にゲームセンター事業は活路を見いだしていた。しかしゲームセンター事業は、フロア面積の大きな事業だ。すなわち「セガが撤退」ではなく、事業環境が改善する見込みが薄い中で「GENDAがゲームセンター事業を今後も残すのはなぜなのか?」がこの話題の本質だ。
“ゲームセンターの衰退”がゲーム産業の衰退ではなく、むしろ隆盛につながっているのは、物理的な制約のないインターネットにゲームコミュニティーが広がったためだ。かつてゲームセンターに集まっていたプレーヤーは、ネットワークゲームのロビーに集まって遊んでいる。
場所や費用の制約が緩和された分だけコミュニティーは大きくなり、またコミュニティーが大きくなったことで、ゲームへの熱量も高まる。つまり、実店舗としてのゲームセンターに人が集まらなくなっただけで、ゲームセンターが生み出していた文化は、むしろより進化、拡大する形で社会の中に根付いているといえるだろう。
かつて90年代にデジタルカメラが誕生したころ、全国津々浦々にまで展開していた銀塩写真のプリントショップが「このままでは写真産業の崩壊」といわれたことがあった。当然ながら、消費者向けのDPE事業やプロ向けの現像サービスは衰退したが、写真を中心とした産業全体としてはむしろ大きくなった。
同じように、広い視野で見れば、単に“ゲームの中のDX(デジタルトランスフォーメーション)”が進んだというだけにすぎない。
今や若年層のコミュニティーはネットが中心であり、リアルの友人ともネットを通じてエンゲージメントが供されている。その中での“ゲーセン”をブランドチェンジまでして残すのはなぜだろうか?
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