原材料不足や高騰による価格転嫁、3社に1社が「全くできず」 7割超で課題に帝国データバンク調べ

» 2022年02月16日 16時15分 公開
[サトウナナミITmedia]

 新型コロナウイルスの感染拡大による供給制約や世界的な需要増加の影響から、木材や鋼材などの不足や価格の高騰がみられている。帝国データバンクが価格転嫁の実態について企業の見解を調査した結果、7割以上の企業が価格転嫁に課題を持ち、3社に1社は「価格転嫁は全くできていない」と回答したことが分かった。

値上げ 原材料不足や高騰にともなう価格転嫁の実態調査

 自社の主な商品・サービスにおいて原材料の不足や高騰の影響について尋ねたところ、「影響がある」と回答した企業は77.3%にのぼり、「影響はない」とする企業は12.2%だった。 また、「影響がある」とした企業の中で、4割程度は多少なりとも価格転嫁ができている一方で、「価格転嫁は全くできていない」という企業は36.3%と3社に1社以上となった。

原材料不足や高騰にともなう価格転嫁の実態調査 原材料不足や高騰の影響と 価格転嫁の状況(帝国データバンク調べ)

 価格転嫁できている企業のうち、「価格転嫁は全てできている」という回答は4.1%にとどまり、7割を超える企業で価格転嫁に課題を持っていることが分かった。

 一部の企業からは、「仕入れ先の一斉値上げに対して、自社の粗利益改善を含めた価格転嫁を全力で取り組んでいる」(包装用品卸売)といった価格転嫁に前向きな声も見られた。しかし、多くの企業からは「価格転嫁することは、下請けの立場からは不可能」(機械工具卸売)、「仕事量が少ないなかどこも売り上げ確保のため安価な見積りを提出するため、価格転嫁をしたら入札物件では落札できない」(内装工事)などといった厳しい声があがった。

卸売業を中心に業種によって価格転嫁ができている企業も

 業種によって価格転嫁の状況に違いがあり、「鉄鋼・非鉄・鉱業製品卸売」(43.5%)や「再生資源卸売」(40.0%)では4割を超える企業が「8割以上価格転嫁できている」と回答した。

値上げ 業種別の価格転嫁の状況(帝国データバンク調べ)

 要因として「原材料不足が顕著となっているため、価格の上昇について合意されやすい」(鉄鋼卸売)、「メーカー側で買い値が設定されるが、原材料確保に主眼が置かれるため比較的高値で推移している」(鉄スクラップ)といった、価格転嫁に対する土壌がある程度生まれていることがあげられた。

 一方で「価格転嫁はあくまでも仕入れ価格の値上げのみで、人件費・運送コストなど自社の経費の上乗せができる環境とはなっていない」(鉄鋼卸売)といった声もあった。 また、「運輸・倉庫」(64.8%)、「飲食店」(64.1%)では6割超の企業で全く価格転嫁できていない結果となった。 

  調査は1月18〜31日に、全国2万4072社を対象に実施。有効回答企業数は1万1981社(回答率49.8%)。

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