楊国福が2月下旬にIPOを申請したとき、中国経済界や投資界隈はある種の感慨に包まれた。
中国ではこの数年、Z世代をターゲットにしたおしゃれでハイテクな外食チェーンが相次ぎ上場したが、楊国福が提供する「麻辣湯」は麻辣(マーラー)スープに好きな肉や野菜、麺を投入して食べる四川省のB級グルメで、上場は言うに及ばず、これほどのチェーン店に成長できると想像していた人は数年前までほとんどいなかった。
地域によって食文化や味の好みが違う中国で、麻辣湯を四川省以外に広げられたのは、創業者の楊国福氏夫妻による味の改良の賜物だといわれている。
楊氏は03年に黒竜江省ハルビン市に1号店を出店、07年前後にフランチャイズを導入し、店舗網を広げていった。店舗数は21年9月末時点で5783店舗に上り、中国本土ではケンタッキーやマクドナルドを上回る。
同社の最大の特徴は、店舗のほとんど(5759店舗)がフランチャイズ店であることだ。
20年の売上高11億1400億元(約200億円)のうち加盟店収入は94.8%の10億5600万元。楊国福は加盟店からロイヤリティーを受け取るだけでなく、食材やスープ、備品を販売している。加盟店からの収入で経営が成り立っているビジネスモデルは、「無印とダイソーとユニクロを足して3で割った」と形容され、中国雑貨チェーンとして有名な、名創優品(メイソウ、MINISO)と非常に似ている。メイソウも5000近い店舗のうち、直営店は100店余りしかない。
具材をスープで煮込むだけの麻辣湯を提供し、1人客が中心なので高度な接客も必要ないことから、楊国福は加盟店への経営指導も大して行っていない。実際、同社の株式の97%を創業者の楊夫妻とその一人息子で保有しており、実態は個人商店のままだ。業界関係者に「何もしなくても加盟店が稼いでくれる最強のモデル」と羨ましがられるのも理解できる。
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