増える“転勤拒否族”、揺れる企業のホンネ“働く場所”の今とこれから(2)(1/3 ページ)

» 2022年03月03日 07時00分 公開
[溝上憲文ITmedia]

連載:“働く場所”の今とこれから

コロナ禍のテレワークの普及に伴い、従来の転居を伴う転勤制度を見直す企業が徐々に増えている。働く場所はこれからどのように変わっていくだろうか? 人事ジャーナリストの溝上憲文氏が、「強制転勤廃止」の流れについて解説する。

 共働き世帯が増加している。それに伴い、生活拠点の変更を迫られる転勤は、生活設計や家族形成にも大きな影響を与え、社員の離職につながる危険性も増している。

 労働政策研究・研修機構が実施した「企業の転勤の実態に関する調査」(2017年10月25日)では、転勤で困難を感じることについて、転勤経験者の正社員に聞いている。

 各項目の「そう思う・ややそう思う」の合計の割合は、「介護がしづらい」が最も多く、75.1%。「持ち家を所有しづらい」(68.1%)、「進学期の子供の教育が難しい」(65.8%)、「育児がしづらい」(53.2%)、「子供を持ちづらい」(32.4%)、「結婚しづらい」(29.3%)と続く。

出典:「企業の転勤の実態に関する調査」労働政策研究・研修機構

 特に中堅層以上の社員に多いであろう、子育てや介護などが高い割合を示している。

 また、エン・ジャパンの「転勤に関する意識調査」(1万539人回答、19年10月24日)によると、「転勤は退職のきっかけになる」と回答した人が31%、「ややなる」が33%。計64%に上る。

 「今後、転勤の辞令が出た場合、どう対処するか」については「承諾する」が13%、「条件付きで承諾する」が50%であるが、「条件に関係なく拒否する」と回答した人が19%も存在する。世代別では30代が21%と最も多く、男女別では男性が16%、女性が23%に達している。

企業のホンネと目的

 転勤拒否の傾向は、企業も十分に認識している。

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