クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

クルマにあふれかえるスイッチ問題。最新メルセデスはどう対処した? 鈴木ケンイチ「自動車市場を読み解く」(1/2 ページ)

» 2022年03月21日 07時00分 公開
[鈴木ケンイチITmedia]

 クルマという製品は、新型が登場するたびに、従来製品よりも性能を高め、新たな機能が追加されています。最近は、衝突軽減自動ブレーキが新車に義務化されるなど、運転支援の機能がどんどんと追加され、さらに電動化も加速。最新モデルには、通信機能も当たり前のように搭載されるようになりました。

 その結果、クルマはどうなるのか。端的にいえば、機能が増加するたびに、それを操るためのスイッチが必要になります。数は多く、その理解と操作は煩雑で困難になる一方です。

 もちろん、自動車メーカーだって、そうした問題があることは理解しています。激増した機能とスイッチを、いかにスマートに、いかに簡単にまとめるのか。新型モデルに乗るたびに、そうした工夫を見てとることができます。

 例えば、メーターを完全なるデジタルのモニターにして、さまざまな情報を一括で表示できるようにしたモデルもあります。でも、情報が多すぎて、老眼ぎみの筆者には、ちょっと辛いというか、詳細を視認するのが困難です。また、物理的なスイッチを極端なまでに排除し、そのほとんどをタッチセンサー付きのディスプレイに集約するモデルもあります。でも、極端すぎて慣れるまでは、逆に使いづらいという側面も。逆に、あちこちに物理的なスイッチを配置するのも、これもどこに何があるのかを把握するのに大変だという見方ができます。

 そんな操作系の試行錯誤が続く中、「近頃、乗った中で、最も洗練されている」と感じたのがメルセデス・ベンツの最新モデル、「Cクラス」です。

メルセデス・ベンツCクラス。右はクロスオーバー風の「C220dオールテレイン」

メルセデス・ベンツが採用した新世代のステアリングホイール

 「Cクラス」は、メルセデス・ベンツのラインアップ中、最もコンパクトなFRセダンです。長らく、日本国内で最も数多く売れるメルセ デス・ベンツの座を守り続けてきたベストセラーでもあります。その「Cクラス」がフルモデルチェンジを行い、2021年の6月から日本での発売が開始されています。22年の1月には、クロスオーバー風の「C220dオールテレイン」を追加。その試乗会において、セダン、ステーションワゴン、オールテレインの3モデルを試乗しました。

 まず、そもそもとしてメルセデス・ベンツは、今となっては少数派となるコラムシフトを採用しているのが特徴です。かつては、普通に、運転席の左側、いわゆるフロアシフトを採用していましたが、00年代以降はハンドルにシフトノブを付ける、いわゆるコラムシフトに移行しました。このフロアシフトのメリットは、「ハンドルから手を離さずに、シフト操作できる」というもの。つまり、安全に走れるというのが特徴です。

 その「ハンドルから手を離さずに」という特徴を、さらに進めたのが、新型の「Cクラス」だったのです。新型「Cクラス」には、20年9月の「Eクラス」の大幅改良から採用された新世代のステアリングホイールが採用されています。

ステアリングに触るだけで感知してくれるセンサー付き

 このステアリングは、静電容量式センサーを備えており、ステアリングを動かさなくても、ドライバーが手を添えていることを検知できるのが売り。ステアリング・アシスト付きの前車追従走行機能(ACC)での利便性を高めています。

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