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仕事で死ねて本望? モーレツ社員の危険すぎる“過剰適応スパイラル”河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(2/3 ページ)

» 2022年03月25日 07時00分 公開
[河合薫ITmedia]
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 先日、コンサルティング会社大手のアクセンチュアと同社の労務を担当するシニアマネジャーが、「社員に違法な残業をさせていた」として書類送検されました。

 報道によると、同社では2021年1月、ソフトウェアエンジニアとしてプログラミングなどの業務を担当する男性社員に、1カ月140時間余りの違法な残業をさせていたそうです。

 労働基準法では1日8時間、週40時間を超えて残業をさせる場合には労使で協定を結ぶ必要がありますが、アクセンチュアでは協定を結ぶための手続きに不備があったとのこと。また、他の複数の社員についても、違法な残業が確認されたということです。

 この問題が報じられるや否やSNS上には、違法に長時間労働をさせた会社へのバッシングに加え、「コンサルって……」という枕詞(まくらことば)をつけたコメントが散見されました。

 「コンサルって、長時間労働しないと生き残れない」
 「コンサルって、140時間超えるのが普通」
 「コンサルって、どんなに本人が仕事量をセーブしたくても、できない現実がある」
 「コンサルって、働いてなんぼの世界。自分、すでに今週で100時間越え」

──などなど、コンサル業界の“当たり前“が発信されていたのです。

コンサル業界では、進んで長時間労働する人も少なくない(提供:ゲッティイメージズ)

 むろん、コンサル業界でも他の企業同様に、長時間労働の削減に動く企業も増えています。今回、問題となったアクセンチュアも、働き方改革を積極的に進めている企業の一つです。

 しかしながら、「長時間労働」という異常な働き方を一掃するのは極めて難しい。本来、長時間労働は「健康問題」とセットで語られるべき問題なのですが、やる気、能力、自信、成長など、「人の知覚」と深く結びついているので、実にややこしいのです。

 心理学における「知覚」とは、「外界からの刺激に意味付けをするまでの過程」のこと。

 つまり、どんなに「週50時間以上働くと労働生産性は下がり、63時間以上働くとむしろ仕事の成果は下がる」という統計的分析に基づくエビデンスを示そうとも、どんなに「6時間未満の睡眠は心筋梗塞のリスクを高める」と戒めようとも、完全にスルー。 頭で理解しても、心は受け止められません。

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