Next Generation

三菱地所にいながら「瞑想施設」を立ち上げた若手社員の描いた世界働く人の日常には「余白」が必要(2/3 ページ)

» 2022年03月28日 05時00分 公開
[小島和子ITmedia]

「日本でメディテーションが成立する」 手応えを感じた瞬間

 17年度の新事業提案制度の応募を決めた当時、長嶋さんは大手町・丸の内・有楽町エリアのオープンイノベーションを担当する街ブランド推進部オープンイノベーション推進室所属、山脇さんはビルの賃貸営業をするビル営業部に所属していた。

 二人は新規事業に挑戦するからには本業でもしっかりと成果を出そうと約束し、仕事終わりや土日の時間で事業プランを練った。品川のカフェで自分たちのありたい生活と、これからの世の中についてお互いに意見を交わし、店が閉まり帰宅してからもお互いの家の近くで夜が更けるまで話し込んだ。同時に、自分たちの目指すイメージに近い国内外のサービスをベンチマークしていった。

 その結果、明確になったのが「もっと自分らしく、やりたいことは全部やる=ビュッフェ型のライフスタイル」を広めたいという思い。このビジョンを17年8月の一次審査でプレゼンすると無事に通過。ファイナリストに残ると、同年12月の最終審査前に事業化のための予算と時間が与えられる。

 最終審査までの期間、二人はまず自分たちのつくりたい世界観と事業プランを再検証する作業から着手する。国内外のサービスのリサーチをするなかで、大きなヒントになったのがニューヨークの事例とそこで働く人たちの考えだった。

 「現地を訪れると、マンハッタン内に複数のスタジオが立ち並び、ビジネスパーソンから主婦まで幅広い層がメディテーションの施設を利用している姿を目の当たりにしました。自分らしく仕事・夢・家族を大切にするには、エネルギーが必要です。そのために、ニューヨークの人たちはライフコーチに相談したり、毎週メディテーションやカウンセリングに通ったりと、セルフケアの文化をすごく大事にしていることが対話する中で分かりました」(山脇さん)

煎茶工芸作家による季節を感じる茶器(Medicha提供)

 帰国後、メディテーションに絞りリサーチを進めると、そこには確固とした市場があり、国内でも成長していく未来が見えた。テーマが決まると、すぐに想定顧客を定めインタビューを始める。

 「当時Medichaのターゲットにしていた『都会で忙しく働く女性』を知人のツテをたどって紹介してもらっては1on1のインタビューをお願いしました。インタビューの場では、サービス内容をビジュアル化した資料を見せて意見をいただくことで課題とニーズを探っていきました」(長嶋さん)

 このサービスを磨き込み、事業化したら伸びるのではないか。そんな確かな手応えを感じ始めたのは見込み客を集めて開催したメディテーションの無料体験イベントだ。イベント集客は開催5日前、自身や知人の協力を得てSNSで告知し、55人が参加。イベント後に用意したアンケートの回答を見ると、満足度は軒並み高得点だった。

2017年11月26日に渋谷のTRUNK HOTELで開催された無料体験イベントの様子(Medicha提供)

 「アンケートの回答や当日の参加者との会話から、何をどこまでやればサービスとして成立し得るかということと、具体ターゲットのペルソナも見えてきました」(山脇さん) こうした内容に加えメディテーションスタジオを展開することを記載した事業プランを12月の最終審査で提出、プレゼンすると採択される。

 翌18年度からは店舗オープンに向けてプランを進め、同年10月の事業化に係る社内審議ではメディテーションをベースにしたステップ・空間演出をサービス化することと、ターゲットのライフスタイルの延長線上を考え都心の中でも閑静な南青山を一号店の場所に選ぶことを提案。審議が通ると、すぐに工事着工し19年6月にスタジオがオープンする。

南青山にあるMedichaのエントランス。ここから地下1階に降りていく

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