とはいえ、三菱地所にとっても不動産以外の新規事業の一号案件のため、新会社の設立にノウハウがあるわけではない。そんな道なき道を切り開く二人を、上司と所属部署のメンバーはみな応援した。「本当に周りの人にも恵まれて運が良かった」と話す長嶋さんと山脇さんだが、全てがはじめて尽くしの中、周りの人に話しては協力を仰ぎ手探りで事業をかたちにしていった。
「最初に行ったのは、コラボレーションしたいアーティストや専門家を知り合いに聞いたり本で探したりして、アプローチすることです。アポが取れたらコンセプトを伝えて、多くの方に壁打ち相手になってもらいました。先の姿が見えずに夢中で駆け抜ける中で事業プランと会社をつくってきたという感じです」(山脇さん)
ただし、「お客さまに届けたい体験の世界観や、体験を通した気持ちの変遷のイメージだけは、明確に頭の中に描けていた」と長嶋さん。「こういうライフスタイルを作りたくて、そのためにこういう体験や環境が必要で、それを実現するにはどうしたらよいか」と、うまく言葉にならないながらも、目指す方向性を共有することを意識したと言う。
その結果、前編でも紹介したようにドラッカースクールのジェレミー・ハンター氏をはじめ錚々(そうそう)たるメンバーを迎え入れることになる。
メディテーション、音響、空間、ライティングとさまざまな分野のプロと出会う中で重視したのは、世界観の一致と共感度の高さ。目指している部分だけブレずに共有できることが分かったら、演出方法はそれぞれアーティストや専門家に委ねていった。
出来上がったスタジオを初めて見たときは「想像を超えた空間が広がっていて、ひとりでも多くのお客さまにこの余白のひとときを届けていきたいと強く思った」と二人は振り返る。
余白をつくり、感性を深める――。Medichaの目指す世界観は、コロナ禍の変化からますます求められるようになった。新しいライフスタイルを日本にも根付かせたいという二人が願った景色をつくる取り組みに今後も注目したい。
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