クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

グローバル化からブロック化へ 世界のものづくりの大きな転換点池田直渡「週刊モータージャーナル」(1/3 ページ)

» 2022年03月28日 07時00分 公開
[池田直渡ITmedia]

 過去30年間、自動車産業は世界でも最も進化した国際分業によって、大きく発展してきた。いわゆるグローバルエコノミー化である。

 高い技術は不要だが、労働集約的で安い人件費が必要な部品と、高度な機材と専門的マネジメントが必要な部材では、最適な生産地が違う。経済発展度が異なる国で生産した部品を、集積してアッセンブリーすることで完成車ができるので、さまざまな発展度の国が近隣に適度に分布していて、地域内で経済が自由化されている、要するに関税などの自由協定があるエリアこそが、最も効率良く自動車を生産できるのだ。

 思い起こせば、1989年の「ベルリンの壁崩壊」による「ボーダレス社会」の到来がその基点で、ドイツから見ると、91年のワルシャワ条約機構の解体によって、東ドイツを筆頭に、ポーランド、チェコスロバキア(後にチェコとスロバキアに分離独立)など、教育水準が高くかつ土地と人件費の安い隣国群が忽然(こつぜん)と姿を現し、2004年の第5次EU拡大で、経済圏としての枠組みが完成したことになる。

グローバル化で自動車産業は発展してきた(写真提供:ゲッティイメージズ)

 ユーロによる統一通貨圏であるEU内では、加盟国同士の為替による経済格差の調整ができないので、経済発展度が高いドイツは、ユーロにより経済力を過小評価された。もし、ドイツマルクであったらマルク=ドルレートはもっとマルクに不利なマルク高になったはずだが、加盟各国との平均で薄められるということは、ドイツにとっては常時自国通貨の買いオペが続いているようなもので、貿易にとって異様に有利な状況が維持された。

 その分、割を食ったのはギリシャやスペインなどEU加盟国中の経済弱小国たちで、ドイツにとって都合の良いユーロ安政策は、彼らにとってのユーロ高政策で賄われていたことになる。「EUはドイツが全欧州から利益を吸い上げる仕組み」だと批判されたのはそういう一面があったからだ。

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