高級ホテルとアメニティーバーは親和性が低いものの、ビジネスホテルで多く見かけるようになったアメニティーバーの導入は、コスト削減に功を奏してきたのだろうか? とあるビジネスホテルの担当者に聞くと「アメニティーバーを導入しても、アメニティーそのものにかかるコストはさほど変わらない」と話す。
プラスチック削減の実質的な効果はさておき、ロビーに置こうが客室に置こうが使う人は使うし使わない人は使わないということか。別のビジネスホテルのスタッフに聞くと、明らかに差が出るのが「客室清掃の人件費」という。実際に取材してみると、まず清掃スタッフが用いるアメニティーバックへセットする必要がなく、もちろん客室へセットすることもない。
スタッフ一人当たりの担当清掃時間は1日4〜5時間というが、アメニティーバーの設置により、15〜30分の短縮効果が出たという(スタッフの作業時間が短縮されるというよりは、作業できる客室が増えるということになる)。当然、清掃スタッフに指導、教育する時間も短縮されるだろう。
ところで、ゲストの評価はどうなのだろうか。アメニティーは客室にあることが常識になっている。入浴なりシャワーなり、バスルームで服を脱いで、あると思ったアメニティーがないと気付いてしまっては遅いという声があるのも現実だ。ロビーの目立つところにアメニティーバーが設置したり、フロントでしっかりと案内をしたりすれば防げるかもしれないが、そういうケースばかりではないということか。
確かにもう一度服を着て取りに行くのはかなり面倒である。結局、客室からアメニティーを撤去することは、ホテルサービスの低下と捉えるゲストがいて、事実、アメニティーバーを導入するビジネスホテルにとっては憂慮すべき問題との声があった。
「声があった」と過去形にしたのも、今回のプラスチック新法が、アメニティーのコストカット=サービス低下という図式に、“環境問題という大義名分が与えられた”と捉えることもできるからだ。
すなわち、アメニティーを客室から撤去したりアメニティーバーにしたりするのは、(本当はコストカットだけれど)新法に対応して環境問題に積極的に取り組むホテルという位置付けにできるリアルな姿といえる。そんな話をとあるビジネスホテル運営会社社長に話したところ、大義名分というと聞こえは悪いが、「背中を押してくれた」と思っていると答えてくれた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング