そんな自他とも認める「起業家教育が進んでいない国」なので当然、日本の起業家は他国の起業家よりも会社を潰していなければおかしい。ズブの素人が会社を軌道に載せられるほど、企業経営は甘いものではない。だから起業家教育が必要だというのが、国際社会の常識なのだ。
が、日本の企業経営にそんな常識は通用しない。17年版中小企業白書の中の、米国、英国、ドイツ、フランス、日本を対象に「起業後の企業生存率の国際比較」が掲載されている。
それによれば、起業後5年間でドイツでは59.8%、英国は57.7%、フランスは55.5%、米国では51.1%の企業が市場から退出している。5年で半分もてばいいというレベルだ。しかし、日本では市場から退出した企業はなんと18.3%だけなのだ。
冷静に考えれば、こんな無茶苦茶な話はないのではないか。先ほどのアントレプレナーシップのランキングで米国は1位、英国は5位、フランスは14位、ドイツは15位だ。つまり、しっかりとした教育を受けた先進国の起業家の半数以上が会社を潰している中で、ほとんど教育を受けていないにもかかわらず、日本の起業家は8割以上が会社を軌道に載せているのだ。
このおかしな現象を説明するのは、2つのシナリオしかない。1つは「起業家教育なんてのは幻想であって、実は素人がカンピュータで経営をしたほうが会社はうまくいく」というもの。もう1つは「日本の起業家は、これらの国の起業家にはない特別な優遇を受けている」というものだ。
もちろん、前者を支持する人もいらっしゃるだろうが、筆者はどうしても後者の可能性が高いと考えてしまう。この連載で繰り返しに説明してきたように、日本は1963年の中小企業基本法を皮切りに、「中小企業は国の宝」という合言葉で、中小企業に手厚い「保護政策」を進めてきた、という動かし難い歴史の事実があるからだ。
これは、中小企業経営者の業界団体である日本商工会議所の政治団体、日本商工連盟が、自民党の有力支持団体となってからはさらに拍車がかかって、政府はあの手この手で、中小企業経営者をなんとか倒産させないように、補助金や税制面での優遇などあらゆる面でサポートをしてきた。
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