企業倒産が当事者にとって人生を左右する深刻な問題であることは間違いない。が、経済全体では、ある程度の倒産は必要だ。経済はビジネスモデルが破綻した事業者が市場から退出して、新しいプレイヤーが参入するという「企業の新陳代謝」によってはじめて、社会はイノベーションが起きて、経済が成長していくからだ。日本はずいぶん昔からそのサイクルがピタッと止まって動脈硬化を起こしており、先の内閣府資料にも「我が国企業の新陳代謝は非常に低くなっている」とある。
日本は労働者に対する求人の数も圧倒的に多いので、倒産によって今より企業の新陳代謝が活性化されても、「仕事がなくて路頭に迷う失業者」などでてこない。事実、さまざまな業界で「人手不足だから外国人を呼べ!」と絶叫しているではないか。
つまり、この日本においては倒産が増えた減ったという問題に一喜一憂する必要はそれほどなということだ。むしろ、倒産ということで言うのならば、われわれが本当に向き合わなければいけないことはもっと別にある。
それは、「世界一会社が潰れない国で働く人たちがなぜちっとも幸せそうに見えないのか」という問題である。一般論として、労働者にとって、会社が倒産がしないことはありがたい。安定して給料をもらえるわけだし、失業の不安もかなり軽減される。ということは、会社がバタバタ倒産する国の労働者より、日本の労働者は幸せを感じているはずだ。
しかし、現実にはそうなっておらず、むしろ「逆」になっている。さまざまな国際比較調査で、日本の労働者の幸福度がダントツに低いという結果が出ているのだ。
例えば、世界最大の人材サービス企業であるランスタッドが21年8月、世界34の国と地域で調査をしたところ、世界の労働者の多くが自身のキャリアの選択に満足している一方で、日本の労働者は満足度が最下位だった。このように日本人労働者が「不幸」だということを示すような国際比較調査は掃いて捨てるほどある。
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