土屋: カインズと同じベイシアグループのワークマンにはワークマンのお客さまがいらっしゃるように、東急ハンズには東急ハンズを好きでいてくれるお客さまがいらっしゃる。同じグループになったからと言って無理やり一緒に、というのは、ちょっと違うかなと思います。
長谷川: 寛大ですね。
土屋: 寛大なのは東急不動産ホールディングスさんです。この提案にOKをいただけたのは、グループ内でいかに東急ハンズが愛されてきたか、その裏返しだと思います。
長谷川: 東急ハンズのイメージと言えば「ほしい物が何でもそろう」。加えて、店員が持つ豊富な商品知識でしょう。
これには「仕入販売制度」といって、店員が商品の仕入れから接客に至るまでの全工程を担当するという東急ハンズならではのやり方が大きく関係しています。「これがええねん」。そう自信を持って言えるのは、自分で仕入れて自分で店に並べているから。小売業の原点ですよね。
でも、インターネットの時代になって状況が変わりました。店員は一人で膨大な数のアイテムを扱わなければなりません。1つの商品をネットで穴があくほど調べて比較検討までして来るお客さんに、知識ではもう勝てません。小売業にとってはかなりの難局ですよね。
土屋: 難しいですよね。でも、全ての商品をそろえる必要もないんじゃないかなと思うんです。そもそも「何でもそろう」というのは幻想です。幻想からちょっと離れることができれば、いろんな選択肢が見えてくると思います。
重要なのは、会社の都合や固定観念ではなく、「お客さまのくらしを起点に考える」ということだと思います。
長谷川氏は、2022年2月に実施した顧客時間 奥谷孝司氏、岩井琢磨氏との「IT酒場放浪記」(動画版)の中で、「東急ハンズらしさを1回リセットした方がいい」と語っている。
「ハンズの店員は何でも知っている。この“ハンズらしさ”を捨ててはいけない」──こういった主張は一見すると正しいが、ネットに商品情報があふれる現代においては、「知識」と「体験」を分けて考える必要がある。
「体験価値によってお客さまの心をつかみ、知識では変に突っ張らず、『お客さま詳しい、さすがですね』でいいのではないか」。そう長谷川氏は述べている。
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