クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

なぜ高級車はFRレイアウトなのか? その独特の乗り味とは高根英幸 「クルマのミライ」(1/5 ページ)

» 2022年04月12日 15時40分 公開
[高根英幸ITmedia]

 マツダがFRの新しいラージ群プラットフォームを採用したSUV、CX-60を発表した。これに対し、新開発された直列6気筒エンジンと合わせて「時代に逆行している」という見方をする声も聞かれる。

 もちろん登場を歓迎するコメントも少なくなく、セダンに対する期待を含めて、ネットではさまざまな記事や意見が溢れている。では、今回のポイントの1つであるFRとはいったい何なのだろうか?

マツダが発表した新しいラージ商品群の第1弾となるCX-60。スケルトンの通りFRプラットフォームで、直列6気筒エンジンも用意するのが特徴だ

FF主流の中で、FRが残っているのはなぜ?

 FR(フロントエンジン・リアドライブ)という駆動方式は、クルマの黎明期から存在する最も基本的なシャーシレイアウトだ。ボディの前にエンジンを置き、後輪を駆動する方式だ。しかし今では主流は完全に、前輪を駆動するFF(フロントエンジン・フロントドライブ)になって久しい。

 エンジンを横置きするFFは、駆動部分をフロントに全て置けることから軽量コンパクトであり、広い居住空間と安定感の高い走りを実現できるという特徴がある。

 FRは高度成長期には軽自動車にも採用されていたが、それは普通車をサイズダウンしたような設計のアプローチや機構の小型化が難しかったという技術的な障害のためだった。だが設計技術や工作技術、材料の進化によって、部品や機構の小型化が可能になり、それによりコストダウンも進んだことで、FFは乗用車で主流となった。

 その結果、FRは前輪が操舵、後輪が駆動というタイヤの役割分担を明確にして余裕を持たせるだけでなく、ボディサイズに余裕があるクルマにのみ採用されていくことで、ゆとりある走りを高めていくことになるのだ。

 Lサイズセダンを世界市場で見渡してみれば、メルセデスもBMWもFRがベースであるし、キャデラックはかなり前からFFへとレイアウトを大胆に転換したのだが、近年になってFRを基本へと戻す動きを見せている。それは大きなボディサイズだからこそ生かせるFRの魅力と、FRでなければ生み出せない乗り味が高級車には欠かせない、と判断しているからだろう。

 今や世界中の乗用車の主流がFF車であるにもかかわらず、FRが生き残っている、そして再び見直されつつあるのは、FFレイアウトでは得られない領域に自動車メーカーが商機を見出しているからなのだ。

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