クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

なぜ高級車はFRレイアウトなのか? その独特の乗り味とは高根英幸 「クルマのミライ」(2/5 ページ)

» 2022年04月12日 15時40分 公開
[高根英幸ITmedia]

FFのポテンシャルに限界も

 横置きFFの場合、エンジンと平行に変速機が備わり、ディファレンシャルギアを介してドライブシャフトを回し、フロントタイヤを駆動する。この仕組みには、ちょっとした悪癖も存在する。そこには進行方向を軸とする力の伝達はなく、全ては車体横向きの車軸方向、すなわちピッチング方向の力だからだ。

 発進時、エンジンの力は変速機によって回転数と引き換えに駆動力を高めて、車体を動かし加速させるのだが、動こうとする時や加速する時には、タイヤが地面を蹴るのとは逆向きの反力が発生する。これは駆動力と釣り合う力ではなく、発進時の抵抗と釣り合うものだ。

 従って反力は動き出す瞬間が最も大きく、車速が上昇していくほどに加速度が小さくなり反力も減少していく。そして定速走行に移り、慣性力も手伝って反力は極めて小さくなる。反力がゼロになるのは、加速も減速もしないパーシャルな領域から走行抵抗分だけ減速される一瞬の領域だけで、減速中はエンジンの反対方向に反力がかかることになる。

 例えば加速途中にアクセルを戻してしまうと、クルマは結構な衝撃を伝えてくることがある。それはエンジンブレーキがかかる(ATではそれほど大きくない)だけでなく、反力が逆向きになるからだ。

 ちなみにATのトルクコンバーターは、そういう衝撃すら吸収してくれるから、滑らかな走りを実現するためにはトルコンは欠かせないデバイスだ。

 それでも大きな反力には耐える構造と吸収できる仕組みを備える必要がある。そこでエンジンマウントを工夫して、トルクロッドにより前後方向の反力から支えていくことになる。

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