アリアで知った、日産の走り味とは 鈴木ケンイチ「自動車市場を読み解く」(2/2 ページ)

» 2022年04月18日 07時00分 公開
[鈴木ケンイチITmedia]
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重厚さよりも軽快さを選んだ

 ただし乗り心地という点でも重量車ではなく、まるでコンパクトSUVのよう。ハッキリ言えば、フロアがひょこひょこと動くという印象が強く残りました。正直、“フラッグシップ”や“上品な加速”と、“軽い動き”に、どこかチグハグさを感じます。「アリアが目指す走り」をつかみ切れずに、モヤモヤとした気持ちで、開発者と対峙(たいじ)することになりました。

 そこで、ずばり「日産の目指す走りとは、どういうものなのか」と尋ねてみれば、「コンフィデンシャル・ドライブ。安心のできる走りです」とのこと。また、欧米ブランドと戦うために軽快さを演出しているともいいます。答えてくれたのは、操安性を担当する開発者です。

 その話を聞いて、ストンと腹に落ちました。

 なるほど、日産の走りの根底には「コンフィデンス(信頼、信用、自信、確信)」があるのかと。また、アリアが戦うミドルSUVのEVというジャンルには、メルセデス・ベンツやBMWをはじめとする欧米プレミアム・ブランドがひしめきあっています。その中で、日産らしさを見せるために、重厚さよりも軽快さを選んだというわけです。

 また、「コンフィデンス」という意味では、確かに、今回のアリアB6は、軽快さがありますが、「どこかで裏切る(予期できない動きをするのでは)」という不安は一切ありません。つまり、アリアは、ライバルと戦うために軽快さを演出しつつも、その根底には、また別の日産の走りの特徴を備えていたのです。

 そうした信頼感は、他の日産車にもあります。「ノート」や「セレナ」といった大人しいキャラクターのモデルだけでなく、「フェアレディZ」や「GT-R」といったスポーツモデルであっても同じ。“信頼できるから、怖くない”と、自信を持って運転できるのです。日産車の走りは「コンフィデンシャル・ドライブ」で統一されていたのです。

 ある意味、ハラハラドキドキというスリル感とは、正反対の方向性です。でも、そんな躾(しつけ)があるからこそ、大きなパワーを扱うことができるのでしょう。そうであれば、これから登場する、より高性能なアリアの走りも予想できます。大容量電池と2モーター4WDのB9 e-4ORCEの出力は290kWもあります。これは馬力にすれば約395馬力。6月に登場する新型「フェアレディZ」の、3リッターV6ターボの298kW(405馬力)に肉薄するのです。

 しかし、コンフィデンシャル・ドライブのB9 e-4ORCEであれば、怖い思いをすることはないはず。上品に大パワーを使うことができるのではないでしょうか。ハンドルを握る機会が来ることを楽しみに期待したいと思います。

筆者プロフィール:鈴木ケンイチ

1966年9月生まれ。茨城県出身。国学院大学卒。大学卒業後に一般誌/女性誌/PR誌/書籍を制作する編集プロダクションに勤務。28歳で独立。徐々に自動車関連のフィールドへ。2003年にJAF公式戦ワンメイクレース(マツダ・ロードスター・パーティレース)に参戦。新車紹介から人物取材、メカニカルなレポートまで幅広く対応。見えにくい、エンジニアリングやコンセプト、魅力などを“分かりやすく“深く”説明することをモットーにする。


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