ダイソー銀座店の広告カラーに込められた秘密 街に伝わる「銀座フィルター」とは本物しか残れない(3/3 ページ)

» 2022年04月20日 07時00分 公開
[濱川太一ITmedia]
前のページへ 1|2|3       

ダイソーは銀座に根を張ることができるか

 銀座に旗艦店をオープンしたダイソーは、オープン初日から入場制限を設けるほどの人気ぶりが伝えられている。

 オープンに先立ち、ダイソーが報道向けに開いた内覧会では、「銀座から世界に」という強い意志を見せる一方、「自分たちは挑戦者」という謙虚な姿勢が目立った。

 市場規模1兆円の100円ショップ業界で、21年度の売上高は過去最高の5493億円という圧倒的な業界首位を誇るダイソーにしては、似つかわしくない腰の低さだ。

 内覧会で登壇した鈴木拓・取締役は、すでに世界26の国と地域に約2300店舗を展開していながらも、「生活インフラとしての認知が弱く、営業できない国もありました」と、あえて同社の弱みに言及。そのうえで「世界中の情報が集まる銀座で、本当に世界に通用するのかチャレンジしたいということで、この銀座を選ばせてもらいました」と話した。

世界に通用するか銀座で挑戦したいと話す鈴木拓・取締役

 小川金也・常務取締役も「50年前に創業者が商売を始めたとき、客からよく言われたのは『安物買いの銭失い』という厳しい言葉だった」と話し、悔しさを抱えながら前進してきたことを明かす。「創業者が大切にしてきた、お客さまの喜ぶ顔が見たいというのが原点であり、世界中の人々の生活をワンプライスで豊かに変えるという社是につながっています」

 あくまでも「挑戦者」としての立場を崩さないダイソー。銀座の街に掲げた白地の控え目なロゴデザインからも、おごらず挑戦者として力試しがしたいという同社の腰の低さが垣間見える。

控え目なロゴデザインがダイソーの挑戦者としての姿勢を物語る

 銀座には4月以降、作業服大手ワークマンの女性向けブランド「#ワークマン女子」や、100円ショップ業界2位の「セリア」など、カジュアルブランドが続々進出を予定する。一方で、ヒューリックが高級温泉旅館「(仮称)ふふ東京銀座」を25年に竣工予定とするなど、銀座らしいハイブランドの進出も控えている。

 「銀座街づくり会議」事務局長の竹沢えり子さんは、「銀座らしさは価格ではない。価格帯が低くても銀座らしくあってほしい」と強調する。

ダイソーに限らず銀座にはカジュアルブランドの進出が相次いで予定されている

 カジュアルブランドの相次ぐ進出に「銀座の街の価値を再定義する時期にきている」などと疑問視する意見も聞かれる。一方で、企業は銀座で自社が通用するか力を試し、あるいは自社のブランドイメージ向上を狙って銀座進出を目指している。銀座は今も、多くの経営者の憧れの場所といえる。

 競争が激化する銀座に、ダイソーは根を張ることができるのか。銀座の関係者や、店に立ち寄る客ら大勢の人が、その手腕を見つめている。

前のページへ 1|2|3       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.