菊原氏は新卒営業の成長には「小さな成功体験」が重要だと話す。エン・ジャパンの調査によると、人材不足の原因で最も大きな割合を占めたのは「退職による欠員」(57%)だった。過去の根性論ベースの営業指導は、離職率を高める大きな原因になると考えられる。
「新卒営業がモチベーションを維持しながら仕事に向き合うためには、営業のテンプレートを設けたり、彼らが『できた!』と感じられるポイントを増やしたりすることが不可欠」(菊原氏)
具体的にどうすればいいのだろうか? ベテラン社員でも難しい飛び込み営業やテレアポを新卒社員に任せるのではなく、既に関係がある顧客へのフォローを任せるなど、中長期的に営業先と関係を構築する機会を提供することが必要だという。短期間で成約に結び付けるような営業ではなく、長期的な視点で成長を促すのがポイントだ。
分譲住宅営業など金額が大きい買い物を例に考えてみたい。電話や飛び込み営業で販売につなげるのは、そう簡単ではないだろう。
菊原氏は「将来的に購入を検討する可能性がある潜在層」に向けてお役立ち情報などを定期的に送付するというやり方を例に挙げる。情報を送り続けることで、顧客の方から「なぜこの情報を送り続けてくるのか」と連絡が入ることがあるという。ここで、意図を説明し、さらに今後も送っていいかを尋ねてみる。営業連絡ではないため、了承してくれる人も少なくないそうだ。
このようなやり取りを通じて関係を構築しておくことで、その後のセールス連絡の心理的なハードルも下がるだろう。加えて「すぐに月の売上目標を達成しなければ」という過度な焦りや緊張からも解放される。顧客との関係性に責任ややりがいを見いだし、営業本来の“楽しみ”を学ぶことができるのだ。
「この手法は業界が違えど、変わるものではない」というのが菊原氏の見解だ。無理なく達成できる仕事に挑戦させ、小さな成功体験を積ませていく。このプロセスが現代の若手営業社員にとっては必要不可欠であり、企業が設定すべき営業のテンプレートの一例だと指摘する。
このようなサイクルを企業が取り入れることで若手営業社員の育成、離職防止や営業職へのイメージ改善につながっていくだろう。
“納得感のない人事評価”の原因に 「目標設定のNGワード」とは?
幹部候補か、“万年ヒラ”か キャリアの分かれ目「30代以降の配置」を、人事はどう決めている?
「会社も社員もWin-Winな福利厚生」とは? 福利厚生の最新トレンドを知る
給与と労働時間、どちらを優先? 日立とパナソニックの「週休3日」は全く違う
「獺祭」の旭酒造はなぜ、新卒給与を21万→30万円に引き上げたのか 社長が語る“異種格闘技戦への覚悟”Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング