軽トラが買い物難民を救う? コンビニとしのぎを削る移動販売「とくし丸」の挑戦都市圏でも増加傾向の買い物難民(3/3 ページ)

» 2022年04月27日 05時00分 公開
[中井彰人ITmedia]
前のページへ 1|2|3       

 コンビニは、市場飽和といわれるようになって久しく、現状ではコロナ禍の影響もあって、店舗数が頭打ちとなっており、国内における市場開拓が大きな課題とされてきた。業界では店舗接客の非接触化を目指す中で、セルフレジの導入を急速に進めてきたが、その先には店舗の無人化によるよりマイクロマーケットへの出店を模索しているとみられる。

 ここでいう店舗の無人化とは、「店内に全くスタッフがいない」というのではなく、接客を無人化してコスト削減を実現することで、より小さい商圏に進出できる店舗フォーマットを構築するというイメージが近い。これまでは採算が合わなかった小商圏への進出を可能とすることで、オフィス内や過疎地、郊外団地などにおいても出店すれば、コンビニの市場飽和はさらに延命する。

 さらなる小商圏型コンビニが実現することによっても、買い物難民は救われるだろう。ただ、こうして生み出された店舗が、高齢者にとってフレンドリーな店になるかどうかは疑問が残る。浸透し始めたセルフレジでも戸惑っている高齢者が散見される中で、無人店舗は高齢者にとってストレスの高い店になってしまうかもしれない。

沖縄の興味深い取り組み

 4月から放送中のNHKの連続テレビ小説「ちむどんどん」は、沖縄を舞台にしたドラマなのだが、この中で「共同売店」という店が登場している。この店は商店がない集落で住民が共同経営するよろず屋のような店で、いってみればコンビニの原点のような店舗である。

 住民にとって必要なものを互助的仕組みで運営する店舗であり、住民の協調があればコストのことをあまり考えなくても維持できるというもので、もう100年以上の歴史があり、現在も存在しているのだという。実は21年の12月から、県内にある共同売店に沖縄ファミリーマートが常温と冷蔵の2台の自動販売機を置くことになり、その他も状況に応じて連携を深めていく取り組みを始めている。まずは自動販売機での連携ということであるが、共同売店という組織が過疎地における超小型コンビニの運営主体となりうる可能性を示した興味深い実験だと思う。

出所:沖縄ファミリーマート発表のプレスリリース

 もちろんこれは沖縄独特の共助組織があってのことなのであろうが、他の地域でも住民が同様の受け皿を組織して、コンビニ本部と連携したミニコンビニを運営することも理屈としては可能だと思われる。高齢化した集落、団地だといっても、人生100年時代の今、よろず屋を運営できる体力を維持していて、地域のために何か貢献したいというアクティブシニアは実は多いのではないか。共同売店のような伝統的組織はなくても、こうした事例を基にコンビニ各社がノウハウ化するということもあり得るだろう。無人店舗がこれからの主流であることは承知の上で、このようなアナログな形での新たなコンビニの在り方についてもぜひ研究してほしい、と思うのである。

著者プロフィール

中井彰人(なかい あきひと)

メガバンク調査部門の流通アナリストとして12年、現在は中小企業診断士として独立。地域流通「愛」を貫き、全国各地への出張の日々を経て、モータリゼーションと業態盛衰の関連性に注目した独自の流通理論に到達。


前のページへ 1|2|3       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.