エルメス店舗開店日に5億円散財の女性も。中国で「超富裕層のロレックス」化するバーキン浦上早苗「中国式ニューエコノミー」(3/4 ページ)

» 2022年04月28日 07時00分 公開
[浦上早苗ITmedia]

中国富裕層の資産はGDPの1.6倍

 中国のラグジュアリー消費は10年代から急成長が続くが、コロナ後はさらに加速している。

 コンサルティングのベイン・アンド・カンパニーによると、21年の中国本土のラグジュアリー商品の販売額は前年比36%増の4710億元(約9兆1400億円)。コロナ前の19年(2340億元)から倍増した。25年には米国を抜いて世界最大のマーケットになると予想されている。

 なぜこれほど市場が拡大しているのか。まず、コロナ禍で旅行に行けない高所得者がブランド品を購入していることが挙げられる。中国人の爆買いが世界で注目された15年ごろから、消費者は欧州や日本で高級ブランドを買い求めるようになった。

 中国政府は内需拡大を妨げる消費行動として眉をひそめていたが、コロナによって図らずしも国内での購入に切り替わり、先述したように内陸都市にエルメスが出店するまでになった。

 もう1つの要因は、富裕層の金余りとされる。中国民間シンクタンクの胡潤研究院が今月まとめた富裕層レポートによると、21年の中国の富裕層の資産総額は前年比9.6%増の160兆元(約3100兆円)で、20年の中国国内総生産(GDP)の1.6倍に達した。資産1000万元(約1億9400万円)の富裕層は前年比2%増の206万世帯。1億元(約19億円)の超富裕層は同2.5%増の13万3000世帯で、コロナ禍にもかかわらず増えている。

 中国政府は格差拡大を是正するため、IT企業を叩いて資産の移転を推進するが、感染拡大で行動制限が発動されると、多くの労働者の賃金が減る一方で、富裕層の資産は株高や金融緩和でむしろ増えることになった。

 お金の使い道がない富裕層が、数百万円のバーキンをはじめ、高額消費に走っているわけだが、とりわけ限定品や希少性の高いものは、自身のステータスにつながるという考えも強い。

 中国でヒットしたドラマ「30女の思うこと 〜上海女子物語〜」の主人公は高級ブランドショップの店員で、作中では30代女性がマダムたちのマウンティングに勝つために、シャネルからエルメスにバッグを替えるシーンもある。

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