旺盛な需要を背に、ラグジュアリーブランドは値上げも頻繁に行っている。ルイ・ヴィトンが22年2月、皮製品、ファッション小物、香水などを10〜20%値上げすると発表すると、中国人女性はひるむどころか、値上げ前に店舗に駆け込んだ。エルメス、セリーヌも今年1月に値上げし、シャネルも21年11月、今年1月と小刻みに定価を改定した。
急ピッチで価格が上がると、SNSでは「投資ファンドを買うよりバッグを買った方がいい」との投稿が拡散した。
定価が上がり続ければ、買ったバッグの資産価値は下がらず、限定版ならむしろプレミアムがつく。量産できないエルメスのバッグは、富裕層にとってロレックスのような投資商品にもなり、値上げすら望むところかもしれない。
上海のロックダウンが長引き、中国経済の減速は確実視されるが、LVMHのグループのジャン ジャック・ギオニ最高財務責任者は決算発表時のアナリスト説明会で「(最初のコロナショックが起きた)20年の経験から、今回のコロナ禍も中国市場の長期的な需要には影響しないと考えている。一時的に販売が落ちても、落ち着けば顧客はまた買いに来る」と自信を見せた。
ただ、説明会の出席者によると、20年以降購買点数が増えたのは個人年収1000万元(約1億9000万円)、世帯年収3000万元(約5億7000万円)の超富裕層だけだという。値上げは、学生やサラリーマンのような普通の消費者をふるい落とし、超富裕層だけを相手にするための戦略とも揶揄(やゆ)されている。
【訂正:4/28 13:10 記事初出時に、中国元を日本円に換算した額が一部で誤っておりました。お詫びして訂正いたします。】
早稲田大学政治経済学部卒。西日本新聞社を経て、中国・大連に国費博士留学および少数民族向けの大学で講師。2016年夏以降東京で、執筆、翻訳、教育などを行う。法政大学MBA兼任講師(コミュニケーション・マネジメント)。帰国して日本語教師と通訳案内士の資格も取得。
最新刊は、「新型コロナ VS 中国14億人」(小学館新書)。twitter:sanadi37。
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