財務や経理のみに限らない、ファイナンス人材の新たなキャリア候補FP&Aについて、FP&Aスペシャリストの鷲巣大輔氏が寄稿。今回は、経営会議の決算報告で「本当に求められていること」についてです。
▼FP&Aとは?
「CFOを目指したい人の登竜門? 『FP&A』とは、どんな仕事なのか」
Q: メーカーでFP&Aを担当しています。策定した予算に基づき、各部門におけるKPIを設定し、毎月各部門の責任者を集めて進捗を確認する会議を主催しています。
予算策定の際に明確にコミュニケーションを取ったはずなのですが、各部門のKPIに対する達成意欲が低く、どこか“ひとごと”な様子で悩んでいます。経営チームはKPIの達成状況を重要視しており、達成のための危機意識がかなり強いのですが、その温度感が全社的に伝わるにはどうしたらいいでしょうか。
A: KPIへのコミットメントが低い理由としては多くのことが考えられますが、一つの可能性として、そもそもそのKPIの本当の意味を各部門が理解していない、また理解してもらうための説明が十分になされていないという可能性があります。
KPIの数値そのものには大した意味はありません。まず達成すべき目的・目標があり、それをどのように達成するかという戦略・打ち手があり、その効果を測定するものがKPIです。KPI「だけ」のコミュニケーションにならず、その背後にある戦略ストーリーについて理解を深める場を設定してみてはいかがでしょうか。
前回の記事「経営会議で毎月の決算報告をしているが、経営チームの反応が薄い……何が足りない?」では、予算に対する進捗モニタリングには、2つの要素があるというお話をしたしました。
予算策定を終え、作りっぱなしにせずに進捗確認をしながら、目標達成のために軌道修正を繰り返す、いわゆるPDCAのサイクルを回すオペレーションの在り方は素晴らしいと思います。一方で注意したいのは、いったんKPIが設定されると、その達成度合いだけをひたすら追いかけてしまうケースです。
こうした場合、往々にして数値を「達成した」「していない」の話に終始し、そもそもの行動目的が達成されたかどうかという本質的な点に目が向かない、という現象が起こりえます。また、数値だけで評価が下されるため実行部隊が多大なプレッシャーにさらされ、本音では目的達成に意味がないと知りながらも数値達成のためだけに行動を続けてしまう……というケースも見られます。
こうなってしまうと本末転倒です。元キヤノン社長・御手洗富士夫氏の言葉を借りれば、「数値なき物語も、物語なき数値も意味はない」のです。
やはり定性的な戦略的行動と、定量的なKPIはワンセットになってこそ意味があります。
という流れを踏まえたうえで、KPIが組み込まれるべきでしょう。
当初はこうした流れを押さえていたのに、予算策定が終了し、いざ実行段階になったとたんにKPIだけで議論が進むというのは、実はせっかく作った戦略のほんの一部分しか見ていないことを意味します。
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