「顧客の成功」を意味するカスタマーサクセスは、サブスクリプションサービスの広がりに伴い、その重要性が高まった。顧客一人ひとりに能動的に働きかけ、「LTV(顧客生涯価値)の最大化」を目指す取り組みだ。前編ではカスタマーサクセスの役割や重要性が高まったきっかけなどについて紹介した。
後編では、カスタマーサクセスと売り切り型ビジネスとの関連性や、どのような課題が生まれたときに部署を新設すべきなのか、toBとtoCでの役割の違いといった疑問を解消していく。
カスタマーサクセスが自社に利益をもたらす存在であることなど、その役割は理解した。では、どのタイミングで部署新設に動けばいいのだろうか?
顧客ロイヤリティ向上を支援するサービス「KiZUKAI」を運営するKiZUKAI(東京都中野区)の山田耕造社長は、「事業内容にかかわらず、最初から設けるべき」と話す。特にDX部門と密に連携が取れる座組がベストだという。
「SNSやクチコミサイトなどを分析することで、顧客が商品やサービスを継続的に購入・利用する理由を可視化できます。そのほかにも、データが蓄積されることで、自社のコアファンになってくれそうな人、逆に解約しそうな人の特徴なども明確になってきます。解約可能性が高い顧客とコアファンそれぞれに最適なコミュニケーションを展開できるようにもなるでしょう」(山田社長)
サブスクサービスであれば、オンライン上で顧客の情報を収集しやすいため、サービス提供開始時から部署を設けることは理にかなっているといえる。一方で売り切り型に当たる、ドラッグストアの棚に並ぶ化粧品などは購入者の属性を把握するのが難しい。売り切り型ビジネスを展開するメーカーや個人店でもカスタマーサクセス部を新設する意味はあるのだろうか。
顧客コミュニティ構築ツール「commmune」を提供するコミューン(東京都品川区)でカスタマーサクセス部 部長を務める高原颯起氏は「売り切り型ビジネスでも部署を設けるべき」と主張する。DtoCブランドやオンラインに特化した商品を展開する企業に顧客を奪われる可能性があるためだ。
業種にかかわらず、カスタマーサクセスの重要性が語られる理由は、カスタマーサクセスが「ファンを作る」取り組みだからといえるだろう。既存顧客が新規顧客を連れてくる仕組み作りや、顧客と商品を一緒に作っていく仲間のような関係性構築は、LTV向上や企業利益に大きく貢献する。
ここで一つ、疑問が浮かぶ。顧客からの反応がSNS上などで見えやすいのはtoCサービスに限った話になるのではないか? というものだ。消費者が使用感や企業の対応などのクチコミを発信しやすいtoCビジネスと異なり、企業を相手にするtoBビジネスは顧客の反応をSNSなどでキャッチするのは難しいこともあるだろう。toCとtoBでカスタマーサクセスの役割はどう変わるのだろうか?
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング