楽天モバイル“ゼロ円撤回”で、変更迫られる事業戦略本田雅一の時事想々(3/4 ページ)

» 2022年05月14日 08時00分 公開
[本田雅一ITmedia]

新規顧客獲得の「予算見直し」が必須に

 契約回線維持コストはゼロではない。まして1Gバイトまで無料だったのだから、そこまでのコストは新規顧客獲得費用として、楽天モバイル内部では捉えていたのではないだろうか。

 携帯電話利用者の総数が増えない中で、主回線として新しい通信事業者が顧客を獲得するのは難しいからだ。

 維持費ゼロ円でまずは顧客になってもらい、あとは楽天グループのサービス連携やポイントアップ、通信回線品質の改善で“実際にお金を払ってくれる顧客へ”と移行してもらうはずだった。ここで顧客が離れてしまえば、ここまで1年あまり続けてきた維持費ゼロ円を提供するために計上していた予算も無駄に終わってしまう。

 楽天モバイルも、新しいプランである「Rakuten UN-LIMIT VII」への移行に際して、始めの2カ月は1Gバイト未満無料、さらに2カ月はポイント還元を強化するなど、よりお得なプランになるよう発表までに調整していたあとが伺える。このように、ポイントなどで“よりお得”にするための原資を増やさねばならないのも、維持費ゼロ円をやめねばならないため。

 つまり、維持費ゼロ円の回線を全廃せねばならないことは、楽天モバイルにとっても大きな痛手、想定外のことだ。

 楽天モバイルは顧客引き止めのために行う、月額相当額のポイント還元も、2カ月が最大。継続的にポイント還元することで、「見かけ上、ゼロ円維持することはできないのか?」という声もあるようだ。

 しかし楽天ポイントはIFRS基準で処理されるため、基本料に相当する金額を売上金から控除しなければならない。すると現在、維持費無料で契約されている回線に、980円を掛けた金額が、毎月、売上から控除されることになる。この処理を長期に渡って継続することは困難だ。

 楽天モバイルとしては、今回のプラン提示が限界だったのではないだろうか。

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