ベンチャーの成長のカギを握る存在、CFO(最高財務責任者)。この連載では、上場後のスタートアップの資金調達や成長支援を行うグロース・キャピタルの嶺井政人CEOが、現在活躍するCFOと対談。キャリアの壁の乗り越え方や、CFOに求められることを探る。
「CFOの意思」第2回の対談相手は、アイスタイル取締役CFO・菅原敬氏。2015年の株価上昇、19年の下落にCFOとしてどう対応し、策を練ったのか。ファイナンス分野は「ほぼ未経験」でも、CFOとしてIPOをリードできた秘訣とは?
前編ではCFOとして向き合ってきた壁や、コンサル出身だからこそ発揮できたという強みに迫る。
嶺井: 菅原さんは04年からアイスタイルにフルタイムで参画され、10年にCFOに就任されました。12年に上場してから、今年で10年。決して平たんな道のりではなかったと思います。
株価の変動も気をもまれたのではないでしょうか。例えば、15年の急激な上昇や、19年の落ち込みなどですね。どのようにこの波に向き合ってこられましたか。
菅原: 15年の株価上昇は、中国の越境ECが立ち上がったタイミングでした。具体的には著名な海外投資家であるキャピタル・グループによる買い入れが呼び水になったと考えていますが、さまざまな海外投資家がアイスタイルの株を買うようになったことがきっかけでした。もともと、もっと時価総額の低い頃からベイリー・ギルフォードのような名門投資家と呼ばれるような人たちが投資してくれていたことも影響しています。
ただ、発行体である事業会社が、株価をコントロールすることはできないし、投資家へコミュニケーションを取りたいと考えても、実現するわけではない。それは投資家が決めることです。会社は、投資家が動いてくれるには? と考えて、仕掛けづくりをしていくしかないんです。
国内で4000弱ある上場企業のうち、半分ほどは流動性が非常に低い、トレーディングボリュームが少ない会社です。それは株式市場の中で忘れられていることを意味しています。
この状態ではファイナンスや株式交換でのM&Aといったコーポレートアクションを考える上でマイナスですし、言わずもがな新規の投資家を呼び込む上でも買いたいときに買えない、売りたいときに売れない株式です。そのため、会社に魅力を感じてもらっても株を買ってもらうことができません。
こういった状態に陥らないよう、ロングオンリーの機関投資家との面談だけでなく、個人投資家や国内外のヘッジファンドとも積極的に接点を持ち、空売りでもいいので株を動かしてもらえるように働きかける。そして流動性を生み出していくことに当社のIRチームは注力しています。
嶺井: なるほど。ただ著名な海外投資家に買われて株価が上がったというシンプルな話ではなく、あらゆるタイプの投資家を巻き込みながら出来高、株価を形成してきたということですね。19年に株価が下落したときはどうですか。
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