空席でも座れない? 札幌市営地下鉄が「優先席」ではなく「専用席」を設けた理由

» 2022年05月27日 15時41分 公開
[今野大一ITmedia]

 札幌市営地下鉄の駅のホームで、自衛官が高校生を暴行した容疑で逮捕されたニュースがネット上で波紋を広げている。読売新聞などによると、高齢者や体の不自由な人が座る「専用席」に座っていた同僚の女性自衛官を高校生が注意したことに、自衛官が腹を立てたという。

 実は札幌市営地下鉄は、「優先席」ではなく「専用席」を設けている。この「専用席」とは何なのか。

札幌市の地下鉄(写真提供:ゲッティイメージズ)

「優先席」から「専用席」に変更

 札幌市交通局のWebサイト「市営交通のよくあるご質問と回答」を見ると、「札幌市の地下鉄はなぜ『優先席』ではなく『専用席』なのですか」という項目があり、その経緯が掲載されている。

 札幌市営地下鉄では、1974年(昭和49年)4月に高齢者や体の不自由な人の利用を想定した「優先席」を試行的に設置していた。だが当時は、若い健常者が座席を占領することも少なくなく、本来の優先利用の対象である高齢者や体の不自由な人などが座れないとの声が多く寄せられた。そのことから、市議会での審議などを踏まえ、75年4月に「専用席」に変更し、現在に至ったのだという。

 また、専用席の利用対象者は高齢者に限定したものではなく、「からだの不自由な人」「乳幼児を連れている人」「妊娠している人」「内部障がいを持っている人」も対象にしている。さらに具体的な対象者が分かるステッカーを掲出したり、車内放送で案内をしたりして、現行の専用席についての理解を深める取り組みを実施しているのだという。

 多くの公共交通機関では高齢者や体の不自由な人などが優先的に使用できる「優先席」が設置されている。「乗りものニュース」が2019年に実施した「列車の優先席に関するアンケート」では、35%の人が「車内がガラガラなら座る」とした一方、26%が「座らない」と回答した。

 このように「優先席」の場合は、乗った人が任意で譲るという位置付けであることも少なくない。では「専用席」では、空きがある場合でも、該当者以外は座ってはいけないのだろうか。

札幌市交通局に聞いた

 同局の業務課に聞いた。

 「基本的には該当の方への専用席という形で運用していますので、対象者がいない場合は空席になるようご協力をお願いしております。ステッカーもその場所に表示しております。加えて定期的に車内放送でも専用席の案内をしております」

 札幌市営地下鉄が「専用席」を設けた背景には、こういった事情があったのだ。

(写真提供:ゲッティイメージズ)

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