成城石井、上場へ 消費意欲が下がる中、高価格帯スーパーに勝ち目はあるか?小売・流通アナリストの視点(4/5 ページ)

» 2022年05月30日 05時00分 公開
[中井彰人ITmedia]

成城石井はどこにある

 成城石井の店舗数は200店舗あまりあるが、その9割以上が首都圏、京阪神、中京の3大都市圏内に展開している。そのうちの7割弱は首都圏にあるのだが、その出店場所のほとんどが鉄道駅周辺に偏っている。

 成城石井の立地を、東京、首都圏(東京以外)、京阪神中部に分けて立地をざっくり分類した図表を作成した。東京都内では9割が駅前立地、うち7割は駅ビル内、東京以外の首都圏でも9割が駅前立地、うち8割は駅ビル内となっている。

成城石井HPより筆者が作成(以下同)。東京・東京以外の首都圏ともに駅前立地が約9割を占める

 この傾向は京阪神、中部においてもほぼ同様である。ちなみに3大都市圏以外の地方エリアにも12店舗ほど出店しているが、これらも全て駅隣接商業施設内である。

京阪神、中部においても駅前立地が9割以上を占める

 大都市圏郊外においては、一部郊外型大型ショッピングモール内に若干出店しているが、その数はかなり少ない。首都圏エリアにおいては駅前単独店やロードサイド単独店も一定数存在するのだが、これらの出店地域は千代田区、中央区、港区、世田谷区、渋谷区、目黒区、神奈川県の田園都市線沿線に集中している。これら地域は平均所得が国内トップクラスとなる「高所得層」居住エリアである。

 これらからざっくり言えば、成城石井の出店適地は「高所得者居住エリア及び大都市圏の駅ビル内」である、といってもいい。

 出店エリアをこうした立地に絞った展開をしているというのは、成城石井の店舗が成立するためには、生活水準に余裕のある消費者の頭数が一定数以上必要だということを示している。

 高所得層の密度が高い都内中心部、もしくは生活に余裕がある消費者が一定数以上通る人流のハブにある駅ビル。これが成城石井の出店適地だとすれば、今後の出店余地は限定的と言わざるを得ない。なぜなら消費者の動線が鉄道と駅を中心にできているような場所は首都圏、京阪神以外にはほとんど存在していないからである。

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