そこに加えて、モヤモヤするのは、欧州の都合で「ESG投資」自体の意味も恣意的に変えられていることだ。これまでESG投資家は環境、社会、ガバナンス的な観点から、売上高の5%以上を軍需関連が占める企業に投資しない、などと決めている場合が多かった。
しかし、ロシアがウクライナに侵攻したことをきっかけにそれがガラリと変わった。例えば、スウェーデン金融大手SEBはこのほど方針を見直し、一部ファンドについて軍需関連の企業に投資できるようにした。
民主主義はキレイゴトだけでは守れない。サステナブルな社会を守るためには、ロシアをぶっ潰さなくてはいけない。そのためには、軍事産業で最新兵器をつくることも「サステナブル」というロジックなのだろう。
「地球環境のため」「サステナブルな社会のため」という美辞麗句を並べていても、本音の部分では「欧州の利益を守る」というゴリゴリのエゴが優先される。そのためには「ゲームのルール」などコロコロ変えていく。EUのガソリン車規制などその典型だ。
こういう欧州の現実を見ていると、池田氏の「SDGsはヨーロッパがエネルギー安全保障を優位に進めるためのルール設定」という話も妙に納得してしまう。
だが、池田氏のような主張があったところで、もはやSDGsやESG投資という大きな動きに日本が逆らうことはできない。政府も自治体も企業も、そしてまだほとんど関心を示していない中小企業でさえも、遅かれ早かれ、この大きな潮流に飲み込まれていくのだろう。
それはつまり、もう少し経過したら、日本でも欧州のように「軍事産業に対してもESG投資をすべき」というムーブメントが盛り上がる可能性もあるということだ。
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