2023年10月に導入されるインボイス制度。実施まで1年半を切り、企業は対応を進めつつあるようだ。クラウド会計ソフトを提供するfreeeが5月に企業の経理・財務担当者を対象に行ったアンケートによると、取引先に対して課税事業者への転換を依頼済み・依頼予定の事業者が半数を超えた。
インボイス制度の狙いの1つとして「益税の阻止」が挙げられるが、それが実際に効果を発揮しつつある。そしてそれは、中小事業者や個人事業主にとって大きな打撃となる形で進んでいる。
freeeが行った調査によると、免税事業者から課税事業者への転換を求める企業は半数を超える
なぜインボイス制度が中小事業者、個人事業主に大打撃となるのか。それは、現在の消費税の取り扱いのおさらいから入るのが理解しやすい。
平成元年(1989年)に消費税が税率3%で導入された際、それまでの世論の大反対があったことを踏まえ、中小企業にかなり配慮した内容でスタートした。具体的には、相手からは消費税をもらえるが、それを税金として収めなくてよい免税事業者という仕組みが用意された。
通常の課税事業者は、取引相手から消費税を乗せた金額を受け取るが、仕入れに使った分を引いた残りについては、税金を収めている。ところが免税事業者となると、消費税を受け取るがそれを税として収める必要がない。消費税分が利益ともいえるため、一般に“益税”と呼ばれる。
消費者が支払った消費税の一部は免税事業者の取り分となり、税金として集められていない。これが益税だ(freee資料より)
財務省の調べによると、国内823万あまりの事業者のうち、免税事業者は512万者と全体の6割を超える。そして免税事業者の85%は個人事業主だ。
免税事業者のほとんどは、個人と小規模法人(財務省の資料を元にしたfreee資料より)
そしてインボイス制度が導入されると、512万者のうち161万者が課税事業者に変わり、消費税を収めることになるだろうと国は見ている。その結果、1事業者あたり年間15万4000円の税負担が発生し、合計で約2480億円の税収増加が見込まれている。
つまり、国内事業者の6割を超える免税事業者にとっては、年間15万4000円の増税となるわけだ。そのほとんどが個人事業主や中小企業であり、負担は小さいものではない。
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