変革の財務経理

インボイス制度で個人事業主大打撃? 過半数の企業が取引先に課税事業者化求める(3/3 ページ)

» 2022年06月01日 07時00分 公開
[斎藤健二ITmedia]
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免税事業者側の対応は?

 では力関係が弱い企業や個人事業主は泣き寝入りなのだろうか。実はインボイス制度でますます複雑化する消費税処理を簡便に済ませられる「簡易課税制度」というものが存在する。これは、売上高が5000万円以下という制約はあるものの、消費税の計算を「みなし」で行えるという制度だ。

 通常、収める消費税は、受け取った消費税から仕入れ時に支払った消費税を差し引いて、残りを収める。この支払った消費税を計算する際に、定められたフォーマットの書面が必要になるというのがインボイス制度のキモだ。

 ところが、簡易課税制度を利用すると、売り上げの何割か仕入れがあったかとみなして計算できる。こと消費税に限っていえば、請求書も領収書も不要で、例えば卸売業でいえば売り上げの90%の仕入れがあったとみなして消費税を計算すればいいことになる。

 freeeのインボイス担当、尾籠威則氏は「簡易課税制度は認知度が低いので、積極的に案内している」と話す。例えば、ITエンジニアやデザイナー、ライティング業のようなサービス業でも、売り上げの50%は仕入れがあったとみなされる。この制度を使うことで、免税事業者から課税事業者に変わっても、事務負担が軽減できるだけでなく、節税ができるケースがあるわけだ。

中小事業者の納税事務負担に配慮する観点で用意された簡易課税制度。事業内容によって、仕入れ額とみなしてよい率が定められている(国税庁より)

 業種によってみなし仕入れ率が異なるため「試算した上で簡易課税制度の導入を検討できるよう、計算補助ツールを用意する検討も行っている」(尾籠氏)という。

 電子領収書の電子保管義務を定めた電子帳簿保存法は、直前まで影響を知らなかった企業が多く、大混乱に陥った。インボイス制度は、さらに輪をかけた混乱も予想される。一方で、電帳法のときと異なるのは、大企業など力関係が強い側は、着々と準備を進めているという点だ。このままだと、増税を丸かぶりするのは、中小企業やフリーランスなどになりかねない。

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