これは「そもそも払うべき税金を免税されていたものが、正常化しただけ」という見方もできる。消費税は、消費者が購入時に支払ったもので、事業者はそれを一時的に“預かっただけ”という見方だ。免税事業者は、それをポケットに入れてしまっていたわけだから、益税はおかしいというのは当然だ。
一方で、免税事業者になれる条件は年々縮小されてきたとはいえ、個人事業主のほとんどは免税事業者であり、その状態が30年以上続いてきた。いわば、消費税込みで報酬を判断するのが通常であり、ここに来て消費税分を支払えというのは一つの増税だともいえる。自営業や個人事業主をサポートする全国商工団体連合会は「インボイス導入で狙われているのは、中小企業淘汰と、さらなる税収の確保だ」と主張している。
いずれにせよ、中小企業や個人事業主にとって、これまでなかった税負担が発生するのは間違いなく、その打撃は小さくない。
ただしインボイス制度は免税事業者を禁止するものではなく、「免税事業者が事業を行いづらく」するものであることには注意が必要だ。
インボイス制度が導入されると、企業が支払う消費税の計算に変更が生じる。企業は外注先などから請求書をもらうが、「適格請求書」でないと支払わなければいけない消費税が増えてしまうのだ。この適格請求書は、免税事業者は発行できない。
つまり外注を使う企業側からすると、消費税の支払いが増加するのを覚悟の上でこれまで同様の取引を行うか、取引先に適格請求書を出すよう求めることになる。冒頭のアンケートに戻ると、すでに過半の企業が取引先に、「課税事業者になって適格請求書を出す」よう求めたということだ。23年10月に向けて、ますますこの動きは進むだろう。
いわば外注先に対して強い立場にある企業が、取引したければ免税事業者としての特典は諦めてくれと通知しているわけだ。freeeの調査でも、企業規模が大きいほど課税事業者転換依頼を行っており、立場の違いが大きく影響していることが分かる。
一方で難しい立ち位置なのが小規模企業だ。取引先に対して、免税事業者をやめてくれと依頼するのは力関係によっては難しい場合も多いだろう。また免税事業者から課税事業者に転換する代わりに、消費税分の報酬値上げを要求される場合もあると見られる。
いずれにしても、約2480億円の税収が新たに生まれるものの、強い立場の企業はそれを負担せず、小規模企業や個人事業主などが、力関係を元に負担せざるを得ないという構図だ。
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