6月1日「選考解禁」なのに、5月で内定率6割のなぜ 就活生の“悲痛”な声に大きな反響政府方針と民間調査を比較(2/3 ページ)

» 2022年06月08日 06時30分 公開
[樋口隆充ITmedia]

“6月1日解禁” 政府「あくまで要請で、強制ではない」

 企業が既に、多くの学生に内定を出していることが各社のデータから明らかになっている。だが、ネルさんが指摘した“6月解禁”というのも、実は一理ある。政府が経済団体に要請した方針では、3月1日以降が「広報活動開始」、6月1日以降が「採用選考活動開始」とされているためだ。

photo 就活日程に関する政府の方針

 政府は方針で広報活動と採用選考についてそれぞれ以下のように定義している。

広報活動とは、採用を目的として、業界情報、企業情報、新卒求人情報などを学生に対して広く発信していく活動をいう。その開始期日の起点は、自社の採用サイトあるいは求人広告会社や就職支援サービス会社の運営するサイトなどで学生の登録を受け付けるプレエントリーの開始時点とする

採用選考活動とは、一定の基準に照らして学生を選抜することを目的とした活動をいう。具体的には、選考の意思をもって学生の順位付け又は選抜を行うもの、あるいは、当該活動に参加しないと選考のための次のステップに進めないものであり、こうした活動のうち、時間と場所を特定して学生を拘束して行う面接や試験などの活動をいう

 こうした定義がある中、政府方針に反して、多くの企業が内々定を出している状況を政府はどう受け止めているのか。23卒の就活日程に関する方針を手掛けた内閣官房は、採用活動の日程が守られない現状について「学生に混乱をもたらすとともに、学生が学修時間などを確保しながら安心して就職活動に取り組める環境を大きく損なう」と指摘する。

政府方針に“グレーゾーン”も

 政府の方針があるにも関わらず、企業が早期選考を進める背景の一つが“グレーゾーン”の存在だ。

 就活には企業に応募するための「エントリーシート」(ES)とWebテストが存在するが、政府は採用選考活動に関する注釈で「エントリーシートの提出、Webテストやテストセンターの受検などによる事前スクリーニングについては、日程・場所などに関して学生に大幅な裁量が与えられていることから、上記の採用選考活動とは区別する」と明記している。

photo Webテストのイメージ(提供:ゲッティイメージズ)

 この解釈を内閣官房に確認すると「採用選考を目的としないものであれば、6月1日以前にES提出とWebテストを実施することは認めている」と回答した上で「説明会参加のためのESなどは制度上あり得るが、採用選考を目的としたものは全て『選考』という扱いになる。選考活動に直結するESの受け付けやWebテストの実施は6月1日以降が望ましい」との認識を示した。3月の広報活動解禁以降、一部企業が早々にESの受け付けを締め切る背景には、政府のグレーゾーンの存在があったのだ。

 その一方で、政府の方針も「あくまでお願いベースであり、強制ではない」(内閣官房)とも指摘しており、内閣官房は「学生が学業に専念できるよう、企業にはできるだけ制度を守ってほしい」と企業に呼び掛けている。

 政府はその他、「広報活動または採用選考活動の開始日より前に行うインターンシップなどについては、募集対象を卒業・修了年度に入る直前の学年に在籍する学生に限定しないこととし、広報活動や採用選考活動と異なるものであることを明確にすること」「卒業・修了後少なくとも3年以内の既卒者は、新規卒業・修了予定者の採用枠に応募できるようにすること」なども方針に盛り込んでいる。

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photo インターンや既卒者に関する要請

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