「こぼしそう」なのに、スタバの“フタなし”フラペチーノが受け入れられたワケ使い捨てゼロ目指す(2/3 ページ)

» 2022年06月09日 12時00分 公開
[大村果歩ITmedia]

キーワードは「共感の醸成」 環境への取り組みが受け入れられるワケ

 樹脂製グラスはともあれ、フタなしのドリンクは「こぼしてしまうのではないか」と不安に思う利用者も多いのではないだろうか。

 古川部長は「スターバックスでは、お客さまと店舗スタッフに『どうしたら共感をしてもらえるのか』を常に意識しています。なぜこの活動が重要なのかを店舗スタッフにていねいに伝えることで、店舗スタッフが共感をしてくれる。すると、店舗スタッフが自分事と考えて自発的にお客さまにお声がけをしてくれる、という良い循環ができています」と話す。

 従業員からの共感を得る→従業員が自信をもって取り組みをおすすめする→利用者に「自分も小さなアクションから始めてみようかな」という意識が芽生える、という流れを確立している。

スタバ フタなしアイスドリンクの提供

 実際に店舗では、呼び掛けを行うほか、店舗スタッフが自作のポップや黒板を自発的に作成するなど、活動の宣伝をしているという。

スタバ 店舗スタッフが作成した黒板アート

 また、「伝え方」にもスタバならではの特徴がある。

 「環境課題解決」という切り口ではなく、楽しい、面白い切り口を探し、コミュニケーションのきっかけにするというのだ。利用者に無理やり変更を強いること、断りにくい雰囲気を作ることはせず、目的や思いを理解してもらうための工夫をしている。

 「フタなしでの提供を受け入れてくださったお客さまに、店舗スタッフが『香りも楽しみながらお召し上がりくださいね』と一言添えてキャラメルマキアートをお渡ししました。その後、お客さまが『本当に香りが良かった。初めてフタなしで飲んだが、アイスなのにすごく香りがした』とわざわざ言いに来てくださったそうです」(古川部長)

スタバ 店舗スタッフと利用者のコミュニケーションも重要だ

店舗スタッフとの連携で利用者の声をくみ取る

 対して課題もあるという。廃棄物が減り、ごみ捨ての頻度が減る一方で、グラスの回収や洗浄などのオペレーション、収納スペースの不足などの課題も出てきた。今後は店舗の収納や返却代のスペースを十分に確保することを目指していく。

 「環境負荷の低い店舗づくりを強化しています。21年12月に開業した『皇居外苑 和田倉噴水公園店』は、使い捨て資材を極力出さないことを前提にし、リユースカップの使用率が平均で7割を記録。このノウハウや実際に働く従業員の意見を全店舗にも反映し、現状の課題を解決していきたいです」(古川部長)

スタバ 樹脂製グラスはドリンクがより美しく見えると好評

 同様に、一般的になりつつある紙ストローも、課題を抱えている。脱プラの観点では評価されているが、耐水性の観点では否定的な意見を持つ人も多い。

 実際に店舗スタッフから「ふにゃふにゃして飲みにくいという意見を多くもらう」と指摘を受け、紙の層を厚くするなど、改善に励んでいるという。店舗スタッフとの密なコミュニケーションにより、利用者の満足度を向上し、結果的に理解、共感を得ているのだろう。

スタバ フタなしフラペチーノと紙ストロー

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